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野村HD・永井CEOの告白「我々は今『潰れる恐怖』と戦っている」

直撃インタビューに答えた
浪川 攻

もう我慢の限界

――しかし、その国内リテール部門に強さの陰りがないか。

むしろ、それは意思をもってやってきた結果だ。「熱血営業」等々、かつてのやり方は志向しない方針を貫いているのだから。

 

リテール分野における顧客基盤のひとつは、年齢が比較的高い富裕層――金融資産で数億円以上――であり、この階層は当社にとってはきわめて大切なお客様だ。この階層が抱いている最大のニーズはトータルの資産をいかにうまく次世代に承継するかである。それに応えるべく、当社はこの数年でプラットフォームを構築し強化してきた。結果として、国内では最も強いハウスとなったと自負しているし、この階層からはきわめて評価を得ている。

しかし、もうひとつのマスアルフエント(準富裕層)は、まったく力を入れてこなかった。当社は530万口座を有する日本最大のオンライン業者である。オンライン口座の契約数も、口座に残高があるベースで350万口座を数える。預かり資産も約35兆円ある。日本最大級のオンラインプラットフォームなのだが、従来、まったく、ここに力を入れてこなかった。

〔photo〕gettyimages

――なぜなのか。

当社のリテール部門が興味を持たなかったからだ。この分野で稼げるとは思っていないからだ。富裕層には痒いところに手が届くようなサービスを提供している一方で、非対面のマス層にはあまりにも興味を抱かずにきた。したがって、サービス内容には競争力が伴っていない。私は2、3年前から「積み立て型の長期累積投資への取り組みが将来、盛衰を決するぞ」と担当役員にも言ってきた。しかし、率直に言って、彼らの動きは鈍かった

――不思議なことだ。なぜ、トップが言っても現場は動かないのか。

センスがないからだ。そこで、今回、見切りをつけた。伝統的な国内ブローカレッジが強いという社内カルチャーに埋没しているなかでは、新たなことに取り組む人は育たない。カルチャー、伝統が邪魔してしまうからだ。

私は2年間我慢した。しかし、もはや、限界を超えた。社内の人材ではダメならば、外部の人材を活用する。ちょうど、2015年12月に私の直轄で金融イノベーション推進支援室(FIO)を社内外の公募で立ち上げている。これと同じ形でやることにした。

たとえば、2018年春に実現したLINEとの提携も社内では議論があった。この提携では当社が49%出資のマイノリティという立場である。かつての当社であれば絶対に組まなかった条件だ。現に、社内には「51%超でないと組む意味がない」という意見も相当あったが、私は説得し押し切った。もちろん、できるならばマジョリティ出資のほうが理想的だが、いまはそんなことを言っている場合ではない。