photo by gettyimages
# 経済・ビジネス

ビジネスを展開するのに、マレーシアはなぜこんなにも適しているのか

未来の空旅はどう変わるか・特別編
親日のマレーシアは、日本との関係が密接になってゆく一方だが、外国人労働者をどう受け入れてゆくかなど、日本人はマレーシアに学ぶべき点も数多いという。首都大学東京特任教授の戸崎肇氏が、ビジネスを展開するのにマレーシアが適している理由を解説する。

20年ぶりに見た驚きの光景

マレーシアは観光地として多くの日本人をひきつけてきた。ペナンなどのリゾート地は有名であり、多くの人々がそこを訪れている。

また、マレーシアはリタイア後の長期滞在地としても人気がある。クアラルンプールにある日本人学校は広大な敷地面積を誇り、恵まれた教育環境を提供している。現地駐在員は教育上、日本よりも恵まれた環境にあるといって過言ではないだろう。

 

とはいえ、ビジネスの舞台としては、上海やシンガポールと比べて、あまり注目を集めることはなかった。ビジネスの中心となるのは首都であるクアラルンプールとなろうが、その現状はなかなか正確には理解できていない。

単に新興の無機質である、あるいはイスラム国家の玄関としてテロの脅威にさらされているのではないか、といった印象を持っている人も少なくないのではないかと思われる。私もその一人であった。

しかし今年、約20年ぶりにクアラルンプールを訪れ、その変貌ぶりに驚き、クアラルンプールは、滞在地として、さらに観光地としても非常に魅力的であるということを再発見した。

そこで、以下、どのようなところが現在マレーシア、特にその首都クアラルンプールの魅力なのかを考えてみたい。

多文化共生の見本

マレーシアは「人種のるつぼ」である。ただ、私は、アメリカとは違った意味でこの言葉を用いている。

アメリカではいろんな人種が融合し、それぞれの特性が変質を遂げている部分が少なくない。また、そうでありながら、トランプ政権下において、依然として多人種の共存が難しいことが改めて顕在化している。

 

これに対して、マレーシアでは、後に述べる地元民優遇政策である「ブミプトラ政策」がとられながらも、多様な人種が文字通り「共存」しているのだ。アメリカと比べて、いろんな文化をより純粋な形で表出していながら、互いに争うことなく平和的に共存している。

また、このことは宗教の多様性にもつながっている。マレーシアを訪れる人は、様々な文化・宗教の共存の在り方を、コンパクトな形で体験できる機会が得られる。このことはマレーシアの観光戦略上大きなセールスポイントとなる。

「手軽」に多様な宗教体験ができることである。また、ビジネスを推進する上でも、国際的なビジネス展開を推進しようとしている企業にとっては、人種・民族の多様性に直面することで、特に若い人材のトレーニングの舞台となるだろう。

マレーシアには多様な人種が共生している(photo by gettyimages)

ムスリム国家として

近年、日本は海外からの観光客の誘致による経済振興を積極的に推進している。いわゆる「インバウンド政策」である。その重要なマーケットの1つとなってきたのがイスラム教を信奉するムスリムの人々である。

2013年、日本はインバウンド誘致を本格的に推進するため、ビザの発給に関し大幅な条件の緩和を行った。その結果、大きな伸びを示したのがタイ、マレーシア、インドネシアであった。

特にイスラム諸国は、その人口の大きさと金融力から、マーケットとしての将来性が期待され、ハラール料理への対応など、官民両サイドで受け入れ態勢の強化が図られた。

IS(イスラミック・ステイツ)による誘拐やテロなどを通じた過激な政治活動によって、そうした動きは停滞してしまったとはいえ、これが恒久的なものとなることはありえないだろう。いずれは解決が図られるだろうし、マーケットは強靭な柔軟性を供えている。