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経産省20代キャリア官僚「覚せい剤密輸」にちらつくダークウェブの影

激務のストレスで手を出した…?

「泳がせ捜査」で逮捕へ

警視庁は4月末、経済産業省のキャリア官僚西田哲也容疑者(逮捕当時28歳)を麻薬特例法違反容疑で逮捕した。

「仕事のストレスで医師に処方された向精神薬を服用していた。より強い効果を求めて覚せい剤に手を出した」。西田容疑者は、警視庁の調べにこう供述しているという。

警察の発表や報道によると、西田容疑者は当初、都内で売人から覚せい剤を購入していたが、その後は海外のサイトを通じて密輸を始めた。

今回、米ロサンゼルスから成田空港に国際郵便で到着したファッション雑誌の袋とじの中に、覚せい剤約22・1グラム(末端価格約130万円)が入っているのを税関職員が発見。

通報を受けた警視庁が郵便物の中身を入れ替え、あえて「泳がせた」ところ、西田容疑者が受け取った。郵便物の宛名は別人で、届け先も異なる住所だったが、西田容疑者は郵便局に電話し自宅に届けさせたという。

 

「ダークウェブ」を使っていたのか?

前述の通り、報道では西田容疑者の薬物入手ルートは「海外サイト」とされている。しかし注意したいのが、容疑者は一般的なネットの世界「表層ウェブ」とは異なる、いわゆる「ダークウェブ」を利用していた可能性が高いということだ。

「ダークウェブ」とは、専用ブラウザ「Tor」などを用いてのみ接続することができる、Google検索にも引っかからないサイト群のこと。TorにはIPアドレスを秘匿する技術が採用されており、アクセス者の割り出しは事実上不可能であるとされる。

ダークウェブ上には、違法薬物をはじめ、個人情報や銃器、さらには放射性物質に至るまで様々な違法物品を販売するサイト(ブラックマーケット)が存在する。2013 年に米FBIによって摘発されているが、過去には「闇のAmazon」の異名をとった大手サイト「シルクロード」が知られていた。

ブラックマーケットにおいては、取引者の匿名を期するため、決済はもっぱらビットコインをはじめとする暗号通貨で行われる。西田容疑者も、暗号通貨で覚せい剤を購入していた。

インターネット史に詳しく、『ダークウェブ・アンダーグラウンド』の著書がある文筆家の木澤佐登志氏は、今回の事件の背景についてこう解説する。

「(薬物の入手経路が)ダークウェブの可能性も十分に考えられると思います。ただし、日本人がダークウェブの海外ブラックマーケットを利用して薬物を個人輸入するのは比較的珍しいケースかと思われます」

木澤氏によれば、日本人がダークウェブを使った薬物購入を画策する場合、ダークウェブ上の数少ない日本語BBSである「Onionちゃんねる」を利用するパターンが多いという。

「このBBSでは、野菜(大麻)、チャリ(コカイン)、氷(覚醒剤)など、国内ディーラーが様々な違法薬物を販売しています。販売方式は『手押し』という直接取引が主流で、メールで連絡を取り合い、所定の場所で落ち合って、現金取引を行うというものです。

これは、日本の郵便システムはチェックが厳しく、薬物押収のリスクが高いからと言われています。同様に、日本の税関も薬物押収に長けているので、基本的に国内ディーラーは海外からの発注を受け付けません。

海外のブラックマーケットのディーラーも、日本の税関の優秀さを知っているため、日本への薬物の発送を避ける傾向にあるようです」(木澤氏)