「しなやかな女性リーダー」という言葉こそが女性の活躍を阻んでいる

日本企業で女性管理職が増えない理由
高田 朝子 プロフィール

男性が選んだ「ロールモデル」がヒットしない

さらに、男性が見て良いと思う人と、女性がみて良いと思う人は必ずしも一致しているとは限らない。同様に人事部の評価と現場の評価は違うことが多い。

ロールモデルとされた人が女性達の心にヒットすればいいが、人事や男性が選んだ視点と、女性達のストライクゾーンが違うのでなかなか難しい。直裁に言えば、そもそも他人がロールモデルを誰かのために選ぶとか示すとか言う行為自体が愚の骨頂である。

勿論ロールモデルはあった方がいい。人間の学習プロセス上、模倣が最も効果的とされるからである。会社から与えられものではなく、本人が「こうなりたい」像を明確にして、自分の目で選択する方がよほど有効である。

しかし、他人から与えられたロールモデルは、その後ろにある「こうなって貰いたい」という企業の一方的な期待だけが強く届き、女性達の心を締め付ける。あんな風になるのならば、昇進したくないという気持ちの方が勝るのである。

 

女性管理職、増えてはいるが…

では、こうした企業・政府のズレた言葉遣いや施策が生み出した、女性管理職をめぐる問題含みの現状はどのようなものなのか。

女性活躍推進法が2015年に施行されて数年がたった。全ての自治体、301人以上の企業に女性管理職等の現状の公開、今後の数値目標と行動計画の公表が義務づけられた。10年の時限立法とは言え漸く政府が本腰をいれた結果といえる。

しかしこれは、今まで男性優位社会をひた走ってきた我が国が、心を入れ替えリベラル派に宗旨替えしたということではない。背景には人口減少による深刻な人手不足があり、女性にも働いて貰わないと社会システムが立ちゆかなくなっている現実がある。

確かに企業は女性管理職の育成に力を入れてきている。雇用均等基本調査において、課長職にある女性が平成17年5.1%、平成29年には10.9%になった。同部長職は平成17年2.8%が平成29年6.3%と確実に増加していることからも、企業がここ10数年、女性管理職の育成に取り組んできたことは否定のしようがない。

〔PHOTO〕iStock

冷ややかな女性、モノを言えない男性

ところが、多くの女性達が諸手をあげて昇進に向かってキャリアデザインを始めているかというと現実は大きく違う。国の行う雇用均等調査でも、毎年必ず20%程度の企業が女性が昇進を希望しないと答えている。

筆者はビジネススクールの教員として日々多くのビジネスパーソンや、企業の人事部の人と接しているが、彼らの多くが「我が社の女性社員は優秀なんだけれども、昇進したがらない」とぼやく。

女性達は女性優遇策の流れの中にいても、「今のままでよい。昇進しても仕事がきつくなるだけで旨味がない」と冷ややかである。

この種の発言は昇進に対して積極的であるはずのMBAの女子学生からも毎年コンスタントに聞かれて驚く。彼女達が必ず言うのは「今の会社では昇進したくない」である。

この種のやりとりに対して、男性達は「会社では昇進の際の女性優先の不条理さに文句を言うと、面倒くさい奴認定をされるので本音は口にしない」と借りてきた猫状態になっているのが興味深い。

人手不足が深刻化している中で、なんとか戦力を増やしたい企業側と、昇進することが自分の幸せだと思っていない人々との間の意識の乖離は根深い。

ここまで見てきた通り、企業が考えている昔ながらの人材育成のやり方や、根底にある女性の振い方への願望が現状とミスマッチを起こし、女性達に昇進を遅疑逡巡させている。企業側がよかれと思ってやっている施策や男性達の厚意が逆に女性達に生きにくさを与えている。

関連記事