「しなやかな女性リーダー」という言葉こそが女性の活躍を阻んでいる

日本企業で女性管理職が増えない理由
高田 朝子 プロフィール

「しなやか」発生のメカニズム

では、なぜ「しなやか」という言葉がここまで普及することになったのだろうか。

戦わない女性が男性社会から好まれるということは、日本のみならず欧米でも同じである。欧米の女性対象のビジネス書の多くで「真正面から相手と戦わず、親切に相手に気配りをすること」が重要だと説く。

日本企業は伝統的に女性の正社員を男性の半分以下に抑え採用してきたために(産業別で見ると女性が多い業種もあるが、全体で見ると男女正社員比率は7:3を20年間維持してきている)、管理職候補になり得る女性の絶対数が少ない。

その中で管理職まで昇進した女性は全体から見るとまだまだ少数派である。日本を代表する某一部上場企業で調査した際に、雇均法世代の女性管理職が入社以降を振り返りしみじみ感想を述べた。

「私の周りを見ても日本の企業では、私について来なさい型、議論大好き型の女性はどこかのタイミングで会社に見切りを付けるか、嫌になるかでみんな辞めている。結果的に今会社に残っているのは、調整型の振る舞いを否としなかった人達だけです」

男性優位の社会の中で、生き残るためには本人が意識してやるか否かは別として、調整型の振る舞いを周囲から求められ、しなやか戦略を維持した者だけが生き残ることができたと考えると、このしなやかブームも合点がいく。

〔PHOTO〕iStock

女性管理職を増やしていかなくてはならなくなった現状で、現存する調整型で残った女性達を見て、「女性のマネジメントスタイルはしなやかであるべきだ」との発想を周囲は再強化する。そして、彼女達をロールモデルとして後進に示す。

そのために、いつまでいってもしなやか戦略が支持され、それが女性達の行動への無駄な足枷となる。その結果、昇進しても苦しいだけという印象のみが残るのである。

 

お節介なロールモデル

「しなやかブーム」の問題を見てきたが、実はこの種の「女性管理職登用のために善意でやっているんだけど、決定的にズレた言動」はほかにもたくさんある。いま触れた「ロールモデル」も、期待されているほど万能ではなく、また場合によっては逆効果になる可能性もある。

現在ではブームが一段落したようにみえるが、一時期、国も企業も女性管理職のロールモデルを作ること、選定することに躍起になった。

厚労省は『女性社員の活躍を推進するためのメンター制導入、ロールモデル普及マニュアル』(2015)を作成した。

その中で、ロールモデルの存在は『①将来のビジョンが描きやすくなり、チャレンジ意欲が高まる②育成された女性がロールモデルとして活躍し、それに続く後進の女性社員を増やすことで、組織風土を変えていくことができる』として強く推奨された。組織学者から見ると、わらしべ長者を彷彿とさせるチャーミングな話である。

多くの企業が女性ロールモデルを組織的に選定したが、それが女性管理職増加にインパクトを与えたという話は少ない。むしろ会社の求める女性はあのタイプなんだと改めて知ってモチベーションが下がったという現場の声の方を多く耳にする

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