借金三千万円で自己破産する者も…若者狙う「悪徳不動産業者」その手口

絶対手を出してはいけません
藤田 知也

儲けるためなら何でもアリ

機構はさらに、5月から調査範囲を広げることにした。これまでは不正に関する情報提供を受けて調査に乗り出すのが常だったが、過去の不正事例などにもとづき、すべての債権から不正の可能性がある融資案件をリストアップし、入居実態や当初の購入目的などを調べ始めた。不正の規模はこれからさらに拡大しそうだ。

私がこの問題に興味を持ったのは、不動産業者たちが年明けから口々にこう話すのを聞いたからだ。

「スルガ銀行の融資で悪さができなくなった業者が、いまは『なんちゃって』に参入している」

住宅ローンで投資物件を買う不正の手口が、「なんちゃって」と呼ばれていることもこのころに知った。

多くの不動産業者は昨年初めまで、スルガ銀行の融資をテコに客をダマし、荒稼ぎできた。客の年収や貯蓄が乏しくても、預金通帳や源泉徴収票の写しを偽造し、はては売り物件の家賃収入や入居率の数字まででっち上げる。そうした不正を黙認するスルガ銀行との二人三脚で、不正を知らない客でも無謀な不動産投資へと引きずり込めた。

 

犯罪まがいの不正の実態が新聞報道などで暴かれると、スルガ銀行は不正を続けられなくなり、一部業務停止の行政処分も受けた。同行を「地銀の優等生」とベタ褒めした金融庁は国会などで「反省」の弁を述べ、過熱する不動産投資への融資に他の金融機関の視線も厳しくなった。

だが、私文書や公文書を偽造しまくる実行役で、不正融資を元手にボロ儲けした不動産業者には、なんの沙汰もなかった。

スルガ銀行の不正融資に関与した業者は、東京都内だけで軽く100社を超える。その多くは国土交通省や東京都から宅地建物取引業の免許を与えられていながら、国と都による行政処分は今春までに業務改善命令が出た2社にとどまる。結果、強欲な業者は看板をつけ替えるなどして、新たな獲物と儲けのチャンスを虎視眈々と狙ってきたのだ。

スルガ銀融資での不正が発覚した複数の業者に「なんちゃって」について尋ねると、こんな答えが返ってきた。

「いまは勘弁してくださいよ。これしか食いぶちがないんですから」
「詳しくは言えませんが、やっているのは事実。客がいて、『蛇口』もあるなら、やるしかないっしょ」

スルガ銀行で暗躍した業者が「なんちゃって」にのめり込み、”実績”も上げているとすれば、これは行政が不正業者を野放しにしてきたツケではないのか。

100件超の「なんちゃって」に関与した前出の販売会社元社員も、意味深にこう話している。

「”スルガ業者”の参入で競争が激しくなったのは間違いない。我々は源泉徴収票を偽造することはしなかったが、彼らは何でもアリで攻めてくるので、えげつないですよ」

フラット35の「闇」はまだまだ深そうだ。

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