日本国内でも屈指の原生自然が残る奄美大島。中でも淡水と海水が入り混じる汽水域に生育する天然のマングローブ林は、沖縄と種子島、奄美大島でしか見られません。豊かな海と森が育む手付かずの自然の懐へ、あるときはカヤックで、あるいは自分の足で、デザイナーの森美穂子さんと一緒にゆったりと、軽やかに旅をしました。

>最初から読む!
 

“遠い自然” と、“近い自然”
関わり方次第で、距離は変わる。

古民家を改装した食堂で島料理を出す〈ハナハナ茶屋〉はおばあちゃんの家みたい。島の黒糖を使った豚の煮物はコク深くお肉はホロホロ。/ハナハナ茶屋 鹿児島県奄美市住用町西仲間271 ☎0997-69-2625

夜、ガイドの島崎仁志さんの誘いでアマミノクロウサギを探しに行った。国の特別天然記念物というから滅多に見られないのかと思ったら、「山道でよく見かける」とのこと。本当!?

観察スポットは、意外にもカヤック体験をした場所に近い国道だった。「ここは車が多くて、クロウサギは滅多に出てこなかったんですけど、数年前にバイパスができて、みんなそっちを通るようになって。それでクロウサギが車の減ったこっちの道に出るようになったんでしょう」「でも今度はクロウサギを見たい人たちの車が来るようになっちゃった」

なんと〈ハナハナ茶屋〉は島崎さんの叔母さんが営むお店だった!

路肩に停車し、森にライトを当てている4WDを指して森さんが言う。「現に私たちもウサギ探しに来ているわけだから、自然との共生は一筋縄ではいかないものですね」とも。

その時、「あ!」と島崎さんが声を上げた。一瞬、茶色くてホワホワとした物体が目に入った。次の瞬間には森の中に隠れて見えなくなってしまったけれど、あの可愛いお尻はウサギのそれに違いなかった。

結局その夜は一度の出会いしかなかったが、森さんは楽しそうだった。「探している時間の方が楽しかったかも。島崎さんに怪談を聞いたり、島に伝わるユタ(シャーマン)について教えてもらったり。夜の森で聞くと神秘的で、いい時間だったな」