対米従属から脱却するために、いま日本がやるべき「3つのこと」

これができない政治家は退場せよ!
矢部 宏治 プロフィール
 
旧安保条約・第3条(要約)
「日本における米軍の法的権利は、両政府間の行政上の協定で決定する」

新安保条約・第6条後半(要約)
「日本における米軍の法的権利は、日米地位協定及び、合意される他の取り決めで決定する」

自戒を込めて告白するが、たった5条しかない旧安保条約と、たった10条しかない新安保条約、その条文を私を含めてこれまで日本人は、誰もきちんと読んでいなかったのだ。

上側の旧安保条約・第3条の下線部分は、外務省訳の日本語の条文では「両政府間の行政協定で決定する」と書かれている。だから研究者もみんな、これを条文化された正規の「日米行政協定(the Administrative Agreement)」のことだと、ずっと疑わずに思っていた。

ところが英語の原文は「政府間の行政上の協定(administrative agreements)で決定する」

つまり国会を関与させずに、政府と政府の合意(政府間協定)だけですべて決定すると書かれている*。

加えて最大の問題は、日米安保の規定(行政協定第26条、地位協定第25条)では、その「政府間の合意」をおこなうのが、日本政府とアメリカ政府そのものではなく、日本の官僚と在日米軍の幹部、そう、あの密室の協議機関「日米合同委員会」だということなのだ。

その結果、日本がまだ占領下にあった朝鮮戦争で、米軍が日本の官僚組織に直接指示をあたえて戦争協力させていた体制が、独立後もそのまま温存されることになってしまったのである。

ここまでが旧安保時代の話だ。そしてここからが、問題の新安保条約の話になる。

上の新安保条約・第6条後半を見てほしい。在日米軍の法的権利は、

「日米地位協定及び、合意される他の取り決めで決定する」

と書かれている。実はこの「合意される他の取り決め」という言葉のなかに、新安保条約の締結後、日米合同委員会でおこなわれることになる密室合意と、加えて安保改定で新設された「日米安保協議委員会」(およびその下部組織)でおこなわれることになる密室合意が、すべて含まれるということなのだ。

この新安保条約の基本構造がわかると、なぜ「討議の記録」という密約の原本から、わざわざ2つの独立した密約(「基地権密約」と「朝鮮戦争・自由出撃密約」)を新たに切り出して、藤山外務大臣にサインをさせ、安保改定の日米合同委員会と日米安保協議委員会の議事録に編入する必要があったかがわかる。

まず「基地権密約」とは「旧安保時代の米軍の権利は、安保改定後も変わらず続く」という密約だ。その文書が安保改定後の日米合同委員会の議事録に編入された結果、それまで旧安保時代に同委員会でおこなわれてきた膨大な秘密合意がすべて、先の「日米地位協定及び、〔今後〕合意される他の取り決めで決定する」という条文にもとづき、国会で批准された日米地位協定の条文と同じ法的効力を持つことになってしまったのだ。

次に「朝鮮戦争・自由出撃密約」とは「朝鮮戦争が起きたときは米軍の自由出撃を認める」という密約だ。その文書が安保改定で新設された日米安保協議委員会の議事録に編入された結果、それまで主に米軍基地の使用(基地権)についておこなわれていた、日本の国会を関与させない形で米軍が日本の官僚に直接指示を与えるシステムが、朝鮮戦争の再開を前提とした米軍と自衛隊との共同軍事行動(指揮権)の分野にまで拡大されてしまった。

事実その後、国会がまったく関与しないうちに、日本国憲法の規定を超えるような内容を含む第1次・第2次・第3次のガイドライン(「日米防衛協力のための指針」)が、この日米安保協議委員会の下部組織で作られていくことになったのである。

*―アメリカでは条約締結権は大統領にあるが、上院の3分の2以上の賛成を必要とするため、大統領が立法府の承認なく他国と政府間協定(executive agreement)を結ぶ権限が慣例として幅広く確立している。米軍部の考えた日米安保は、この形を使って日本の国会を一切関与させずに日本を軍事利用する体制だった。

輝ける未来のためにすべきこと

このような構造を知ると、せっかく盛り上がりつつある地位協定の改定運動に水をかけるようで大変申し訳ないのだが、いくら地位協定の条文を変えても、新安保条約・第6条後半の「及び合意される他の取り決め(で決定する)」という部分を削除しないかぎり、なんの意味もないことがわかる。この短い文言のなかにはすでにご説明したとおり、日米合同委員会だけでも(安保改定以前と以後をあわせて)1600回を超える、密室での秘密合意の内容がすべて含まれているからだ。

だから地位協定を本気で改定しようとするなら、必ず新安保条約・第6条から上の下線部分を削除したうえで、改定をおこなう必要がある。つまりそれは非常にミニマムな形ではあるが「安保再改定」にならざるをえないということだ。

「いや、地位協定の改定だけでもハードルが高いのに、安保再改定なんて絶対無理だよ」

とあなたは思うかもしれない。けれどもそんなことは、まったくないのだ。