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# 働き方 # 家事 # 過労死

職場が休息の場に…ワーキング・マザー過労問題のリアル

過労死問題の未来がここにある

「預けられる父親」

令和の時代が始まった。憲政史上初となる天皇の退位にともない、10日間の大型連休が実現した。お祝いムードが演出される中、人々は旅行にレジャー、休息にと、思い思いの休日を過ごしたことだろう。

大阪のオフィス街では、閑散期の貸会議室を利用した「パパさん預かりサービス」が出現し、好評を得たという。携帯の充電器やWi-Fiが完備され、バランスボールやフットマッサージ、マットもあってゴロゴロできる。キッズスペースやDVDもあり、子連れで利用可能な貸スペースは1時間500円、フリータイム1000円という手頃さである(ママも利用可能)。

なるほど、至るところに商機は見いだせるのだなと感心半分、「預けられる父親」とはこれいかにという疑問半分でニュースを見ていた。買い物客やベビーカーでごった返す百貨店のキッズ売り場や婦人服売り場で、手持ち無沙汰にぼんやりしている父親を見かけることがあるが、それがそのまま「預けられ場所」に移動してきたということだろうか。

このサービス、母親がショッピングしている間に父子がスポット的に利用するケースもあれば、母親が出勤でワンオペ育児になってしまった父親が子どもとともに「預けられる」ケースもあったらしい。「夫は大きな子どもと思え」を地で行くネーミングとサービス利用の在り方に、家事育児をめぐるジェンダー・バイアスが感じられる現象であった。

子どもと一緒に預けられてしまう立場には、育児の責任が免除されているように見える。家事育児を我が事として引き受け、妻と同程度にこなしている父親たちは、このニュースをどう見たのだろうか。いつまでたっても男性がこのような扱いを受けることに歯がゆい思いをした人もいることだろう。

 

職場でホッとする

そんな大型連休明け、子どもを保育園や学校に送り出し、夫も自分も出勤する普段通りの生活に戻ったことで、ホッとしているワーママは多いだろう。自宅でエネルギーを持て余す子どもの相手にかかりきりになるよりも、そしてそれをいなしながら溜まった家事や自分の仕事をするよりも、大人ばかりの職場で業務を遂行しているほうが何倍も楽である。

もちろん、職場にも人間関係のコンフリクトや劣悪な労働環境があり、ハラスメントや長時間労働の果てに亡くなっていく人が後を絶たないことは承知している。だが、ワーママにとって職場は、家庭や家事育児から離れ、子どもの要求や泣き声に邪魔されずにある程度自分のペースで仕事を遂行できる場であり、個としての自分を取り戻せる場である。

アメリカの社会学者A. R. ホックシールドは、詳細なフィールドワークとインタビュー調査の中で、職場が家庭からの逃げ場、時に休息の場だとこっそり教えてくれたワーママたちの声を拾っている。

いいかえればそれは、職場が休息の場と感じられるほどに家事育児は過酷であるということ、そして、職場での職務と家庭での家事育児とのスケジュールを滞りなく回していくために、ワーママたちは千手観音がジャグリングをするかのごとく忙しく立ち回っていることの示唆である。24時間、1000本の手から1つのボールも落とさないようにするためには、研ぎ澄まされた慎重さと心身のタフネスが必要だ。