2019.05.24
# 食品・健康

有名ホテルも使う「冷凍したパン」がおいしいと言えるこれだけの理由

スタイルブレッド・田中知社長に聞く
夏目 幸明 プロフィール

人も組織も螺旋状に成長する

家業から企業への転換は、並大抵の苦労ではありませんでした。パン屋は毎日お金が入ってくる「現金商売」です。しかし冷凍パンは売掛金で販売するので、現金が入ってくるのはしばらく後になります。だから成長して黒字が出るほど、当座の運転資金は足りなくなるんです。

マネジメントも勉強中です。社員皆が目標管理シートに自分の上期、下期の目標を書き出し、毎週、上長と部下で進捗の報告や相談をします。人はともすると目標を見失うからです。

経営者は何も成果物はつくり出さず、皆につくってもらうもの。「人間とは何か」を知る必要があるので、パンを焼くのとは別の能力を必要とするようです。

 

私が変わっているとしたら「繰り返しが好き」なことでしょうか。ユニクロの柳井正さんの本など、感銘を受けた書籍は何度も繰り返し読みます。マネジメントでも、飽きずに、目標管理とフィードバックを繰り返します。

何かができるようになる時って、人も組織も螺旋を描いて成長していくと思うんです。「前に同じことやったよな?」「でも前より上手くなってるな」と。だから、同じ作業も飽きないことがいい結果を招いているのかな、とも思っています。

子どもにも大人気の「はちみつ豆乳パン」。スタイルブレッドの冷凍パンはオンラインストア(https://online-stylebread.com/)で購入できる。

今の悩みはまだ「冷凍」のイメージがよくないこと。冷凍パンのほうが優れた部分はたくさんあります。たとえば保存料が不要で、工場での大量生産だから手間もかけられます。イーストを使って生地を2~3時間で熟成させるパンが多いのですが、当社は天然酵母を使い出荷まで一日かけて長時間熟成しています。

冷凍パンのマニュアルづくりで難しかったのは冷凍の方法でなく、冷凍する利点を活かしてどれだけおいしくつくるかでした。

当社の製品は、通販でご家庭向けにも販売しています。「Pan&(パンド)」という商品です。今まで経営のことを話してきましたが、やっぱり私は、子どもの頃からの「パン屋」なのでしょう。

今も全国展開で多忙ですが、それより焼きたてを召し上がっていただくことが私の夢であり、喜びなんです。(取材・文/夏目幸明)

田中 知(たなか・さとる)
'68年、群馬県生まれ。東京製菓学校のパン本科を卒業し、米国修業、製粉会社勤務を経て'90年に田中製パン所へ入社。'99年に米国のパンの研修ツアーに参加。冷凍パンの研究を開始し、'05年に代表取締役社長に就任、翌年、社名をスタイルブレッドに変更して業務転換。現在は一日10万個ものパンを製造する

『週刊現代』2019年5月25日号より

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