# 食品・健康

有名ホテルも使う「冷凍したパン」がおいしいと言えるこれだけの理由

スタイルブレッド・田中知社長に聞く

全国に“焼きたてパン”を届ける企業が注目を集めている。群馬県桐生市の「スタイルブレッド」だ。大正時代創業の「田中製パン所」が前身で、4代目の田中知社長(50歳)は、米国で革命的な技術と出会って事業を全国規模に拡大。製品は続々、有名ホテル・レストランに採用されているという。

(写真:中村將一)

米国流の「合理主義」に衝撃を受けた

近年、冷凍ごはんや冷凍麺の味が良くなってると感じませんか? 当社はこれと同様、おいしい焼きたてのパンを急速冷凍して全国にお届けしています。

ホテルやレストランが焼きたてのパンを出すには、莫大なコストがかかります。ミキサーやオーブンを揃え、朝食に間に合わせるため、夜中から働く必要があるからです。しかし冷凍パンなら、数分トースターで焼くだけで、窯から出したばかりの味になります。パリッと割ると湯気まで出るんですよ。

働き方改革や効率化が求められる世の中に、我々は技術面からアプローチできているのだと思います。

 

30歳の時、米国で冷凍パンに出会いました。衝撃的だったのは、味もさることながら、米国流の「合理主義」の凄みです。

日本のパン職人は、フランスの技術が世界の頂点と考え、職人技を磨こうとする傾向があります。私自身そうでした。しかし米国では、新技術があればすぐ取り入れ、属人的な経験や勘を徹底的にマニュアル化し、一気にビジネスを拡大するんです。

冷凍パンと出会った当時。それから約5年かけ冷凍パンならではの特性を活かした焼き方のマニュアルを作成した

パン屋の2階で生まれ育ち、小学生の頃から家業を手伝ってカレーパンを揚げたりしていました。パン屋は焼きたてを食べてもらいたくて、合理的ではなくとも、パンを一日何回かにわけて焼きます。子どもの頃は意識しませんでしたが、多分私も、父のそんな姿勢を見て、パンが好きでたまらない人間に育ったのだと思います。

父はたまに「アリは象に踏まれても死なない。ネズミは死ぬ。だからネズミになるな」とも言っていました。小さな「田中製パン所」を中途半端に大きくするな、という意味です。これが3代続いた知恵だったのかもしれません。

一番辛かったのは、父が引退して私が社長になった時です。なんと社員の半数が辞めてしまったのです。私が冷凍パンの研究をしている頃から父は事業に反対で、社員からも口々に「店を潰す気ですか」と言われました。

でも私は、技術革新を知ってしまった者の使命だと思い研究をやめませんでした。今も、誰も悪くなかったと思いますし、辞めていった方を思うと、ただ、悲しく、申し訳ない気持ちになります。

現在80歳を超えた父は、今でもたまに「潰れないか?」とだけ訊いてきます。私も決まって「潰れないように頑張ってるよ」と明るい口調で答えます。そして心の中で「心配ばかりかけて済まないなぁ」と思うのです。