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突然の「首都移転閣議決定」でもインドネシア国民が動じないワケ

試されるジョコ・ウィドド政権の本気度

インドネシア政府がジャカルタからの首都移転方針を明らかにし、海外メディアは大きく報じているが、インドネシア国内では話題にはなっているものの、さほど大きなニュースにはなっていない。

これまでに何度も俎上に上がった「首都移転計画」だけに、「またか」という冷静な反応が目立つのも事実である。

首都移転には巨額の費用と広大な土地、そして長期的な時間がかかることもあり、将来的に実現することは可能性としてはあるものの、「完全移転」ではなく「一部移転」がせいぜいではないか、との見方も有力となっている。

最悪の交通渋滞と環境汚染

4月29日、バンバン・ブロジョヌゴロ国家開発計画庁長官が「ジョコ・ウィドド大統領が首都移転計画に賛同を示した」として、今後、閣議決定で首都移転を進める方針が確認され、ジョコ・ウィドド政権がこの問題に前向きに取り組む姿勢を明らかにした。

ジャカルタは、約2億6000万人を擁しインドネシアの約60%の人口が集中するジャワ島西部にあり、ジャカルタだけで約1000万人、周囲の首都圏を加えると3000万人を抱える巨大首都である。

人と物が過度に集中しているため、市内の交通渋滞はいまやタイのバンコクを抜いて東南アジア諸国連合(ASEAN)でも最悪とされている。

4月1日に正式に開通したインドネシア初の地下鉄部分を含む都市高速鉄道(MRT)、バス専用レーン、車番(ナンバープレート)の末尾数字の奇数、偶数による乗り入れ制限などにより中心部の大渋滞は若干緩和されたものの、日系企業などが工場を構える約50キロ離れた郊外の工業団地には、通常1時間の高速道路が、渋滞時には3、4時間かかるという状況になっている。

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ジャカルタにあった日本人学校も4月18日から、通学困難な郊外の生徒に配慮して東部の西ジャワ州ブカシ県デルタマスに新たな学校を開校させ、生徒数52人でスタートした。主な児童は周辺のジャカルタ東部工業団地などで仕事をする在留邦人の子弟であり、長年の新設校構想が実現した形となる。

ジャカルタの交通渋滞による経済損失は年間で100兆ルピア(約70億4000万ドル)とされ、経済活動停滞の一因とも指摘されている。

 

渋滞問題に加えてインフラ整備が遅れているジャカルタでは、北部海岸沿い地区を中心に地盤沈下が進んでおり、主要国の首都で最も早く水没の懸念がある都市との指摘もある。

排水設備の未整備から、大雨時には中心部での洪水被害は後を絶たず、洪水による交通マヒが渋滞に輪をかける事態が再三繰り返されている。

人口集中による失業者の増大、住宅不足も深刻で、ゴミ、汚水、下水などによる環境汚染も大きな課題となっている。

2018年にジャカルタで開催されたアジア競技大会では、選手村近くにあった汚染で悪臭が蔓延していた河川を特殊素材の膜で覆い隠してしまうという、強引な対処療法で切り抜けたこともあった。