令和の幕開けを見舞った「米国株の暴落」の正しい読み方
トランプの強気発言の背景にあるもの株式市場は波乱の展開
平成から令和へ新しい時代への移行もあり、新たな希望を抱きながら楽しく過ごすことができた今年のGW(ゴールデンウィーク)だったが、連休明けの株式市場は波乱の展開となった。
きっかけは、まもなく一応の交渉妥結が近いと思われていた米中貿易交渉が突然暗転したことだった。トランプ米大統領が自身のツイッターで中国からの輸出品に対する25%の関税付与を実施する可能性に言及したのである。
これによって、中国の景況観改善と予想外に堅調な米国景気によって楽観ムードが醸成されつつあった世界の株式市場の様相が一変した。
一見、トランプ大統領がもたらしたかにみえるこの米国株の調整について、筆者は、過度な楽観論によって割高になった株価の調整が前倒しで来たのではないかと考えている。トランプ発言が先行き不透明感を一気に増大させたのは確かだが、それがなくても、別のきっかけによって米国株は調整したのではなかろうか。
これについては4月18日の当コラム『不気味な上昇を続ける株式市場…これは「不景気の株高」か?』で指摘しておいた。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/64197
筆者は、マクロ経済環境と整合的な株価の「均衡値」を、株価と失業率(ただし、労働参加率で再調整したベース)の間の「共和分」という統計的な関係をもとに考えるようにしている(図表1)。
この関係に基づいて、4月末時点での米国株価指数(ここではニューヨークダウ工業株30種平均を用いている)の「均衡値」のレンジを試算すると、23000ドルから26500ドル(中心値が24600ドル)近傍になる。
実際のニューヨークダウ平均株価は26700ドルに数回接近するような動きをしており、4月には、堅調なマクロ経済指標との関係と整合的な株価のレンジを超えていた(図表2)。
もちろん、「共和分」の関係自体が変化することはあるが(これは定量的に判断する統計的な指標がある)、通常は、株価が、このレンジから上下に逸脱する局面では、再びレンジ内に戻ろうとする傾向がある。
この一般ケースで考えると、4月末時点で株価は割高感の修正が近づいていた。