「乙武さんの力を貸してください」

「対談のときに話していた乙武プロジェクト、ついに予算がおりまして」

遠藤さんは、どこかすでにウキウキした様子だった。それはそうかもしれない。私はなかば社交辞令とはいえ、すでに一度承諾しているのだ。彼の中ではもうプロジェクトが動き出しているのだろう。

朝の静かなラウンジで、私は彼らのプロジェクトにかける思いを聞いた。

乙武さんが二本の足で街を歩くなんて、想像しただけでワクワクします。きっとそれは世の中を変える力になります」

遠藤氏は力説した。

「2020年の国民的イベントと僕らが取り組むテクノロジーのアプローチが交差すれば、人工知能やデジタルファブリケーションの側から身体多様性と向き合うことに、広く関心を持ってもらえると思います」

落合氏の言葉も納得できた。

彼らふたりは終始ワクワクしながら話をしている。ありがちな障害者問題の打ち合わせとはだいぶ雰囲気が違っていた。彼らは根っからの研究者で、今まで見たこともない景色をテクノロジーの力で見てみたい、その好奇心だけで動いているようだった。そして、それは私にとっても、とても心地よい時間だった。

現在開発中のロボット義足についての話は、聞けば聞くほど興味深く、私の心にも小さいけれど力強い火が灯るのを感じた。

乙武さんの力を貸してください

遠藤氏にそう言われ、素直にうれしかった。

誰かの役に立ちたい

誰からも必要とされない立場となって、1年半が過ぎていた。もう自分が社会に貢献することなどできないのだろうと思っていた。しかし、もしロボット義足で四肢欠損の私が歩けるようになったら、脚を失って失意の底に沈んでいる人に、これから義足を使うことになる人に、もしかしたら障害以外に困難を抱えている人に、大きな勇気を与えることができるかもしれない。

遠藤さんから「乙武さんだからこそお願いしたいんです」と言われ、私は「やりましょう」と答えていた。誰かに必要とされること、誰かの役に立てることに、飢えていたのだ。

騒動以前のように朝から晩までぎっしりと詰まったスケジュールだったら、引き受けることはできなかっただろう。義足で歩けるようになるためのトレーニングは、半年や1年で終わるものではない、とてもハードなものだという。

心地いい鋭気が、体を満たしていくのを感じた。遠藤氏の「けっこう大変な時期もあるとは思うんですけど」という言葉は、ひさしぶりの感覚に胸を躍らせる私の耳にはどうやら届いていなかったようだ。

構成/園田菜々

次回は6月2日公開予定です

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