2年前の「約束」

2017年10月、海外生活を続けていた私のもとに一通のメッセージが届いた。

乙武さん、予算がとれました

私には一瞬、何のことか分からなかった。

2年前に語っていた「乙武サイボーグ化計画」は、遠藤氏の中で生き続けていたのだ。

対談のときには「それはおもしろい!」と答えたが、まさか本当に具体的になるとは。

「日本に一時帰国するタイミングで、ぜひお話を聞かせてください」

私はそう書いて、送信ボタンを押した。

「世界一住みやすい街」と言われるオーストラリアのメルボルンにて。37ヵ国を巡る旅をしていた

落合陽一氏・遠藤氏との会合

2017年10月13日、朝8時。私は都内にあるホテルのティールームにいた。一年間の旅の途中だったが、この時はいくつか打ち合わせを必要とする用件が重なり、一時帰国していたのだ。遠くから、懐かしい顔と見たことのある顔、ふたりが向かってくるのが見える。遠藤氏と、筑波大学図書館情報メディア系准教授の落合陽一氏だ。

この乙武プロジェクトは、文部科学省が所管する科学技術振興機構(JST)の「CREST」という研究プログラムによるものだ。研究テーマが大学などの研究者から提案され、それが認められれば予算がおりて研究が進められる仕組みになっている。

遠藤氏は、落合氏が率いる「クロス・ダイバーシティ」というプロジェクトの共同研究者のひとりとして名を連ね、そこで「乙武義足プロジェクト」を提案した。

クロス・ダイバーシティが目指すのは、「計算機によって多様性を実現する社会に向けた超AI基盤に基づく空間視聴触覚技術の社会実装」。思いきりわかりやすくいうと、超高齢社会の多様な社会課題をテクノロジーで解決するということだ。私に白羽の矢が立ったのは、私が義足で歩くことは、障害者が身体能力を拡張するだけにとどまらず、社会変革の契機になると考えられたからである。

落合陽一氏と会うのは、その日がはじめてだった。

研究者、アーティスト、ベストセラー作家……じつに多くの顔を持ち、メディアの寵児として活躍してもいる落合氏だが、「はじめまして」と言いながら気さくに笑う彼の表情に、それまでメディアを通して抱いていた「とっつきにくさ」のようなものは少しも感じなかった。