韓国の「親日派清算運動」が永遠に続くと言える理由

ソウル生まれのライターが読み解く
崔 碩栄 プロフィール

「親日清算」の本当の意味とは

今回、文在寅大統領が3.1節の記念辞で使用した「親日残滓清算」とは、数十年間行ってきた「日本残滓清算」がより具体化され、強調されたものである。それは、日本の「遺産」を排斥しようというよりも、「人間」、即ち「親日派」とその子孫を清算しようというものだ。一般的に韓国で「親日派」とは日本統治時代に行政、軍、警察の高官を務めた人、戦争協力者など「過去の人」を指す言葉だ。

だが、一つの疑問が浮かんでくる。1945年の終戦時、弱冠20歳の青年だった人は、既に90歳を超えている。この世を去った人も少なくない。では文大統領のいう清算すべき「親日派」とはいったい誰のことを指しているのだろうか? 現在の韓国において「親日派」とされる人がどのくらいいるのか。なぜ大統領は親日清算を「宿題」という大仰な言葉で表現したのだろうか? という疑問だ。

文大統領のいう「親日」とは、実は文在寅政権の「反対勢力」、即ち、朴槿惠前大統領の弾劾により与党から野党へ転落した保守勢力を指す。現在の与党とその支持勢力、即ち韓国の左派勢力は既に、李明博、朴槿惠の時代から保守勢力に「親日派」というレッテルを貼り、反日感情が強い国民を煽り立ててきた。

李明博元大統領は独島(日本名、竹島)上陸や天皇謝罪発言で、朴槿惠前大統領は「(韓日の)被害者と加害者という立場は千年が流れたとしても変わらない」といった発言で日本においては反日大統領だというイメージが強い。

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しかし、これとは対照的に韓国内においては親日派、あるいは親日派の子孫だという攻撃を受けてきた。その理由は、実のところ、二人とも保守系の政治家であるということによる。親日派批判は韓国の左派が独占使用する強力な政治道具なのである。

現政権のこのような「親日派攻撃」は北朝鮮とも連動している。北朝鮮もまた李明博、朴槿惠を親日派だと断じ非難してきた。それだけではない。最近では韓国与党と同じ、「土着倭寇」(自生的な親日派という意味)という新しい表現を使って、北朝鮮が韓国の保守野党を攻撃している。北朝鮮と現韓国与党の共通の敵こそが清算の対象になる「親日残滓」、つまり韓国の保守右派なのだ。

 

韓国が「日帝残滓」を清算することができない理由

韓国は数十年間に渡り「日帝残滓」を清算すると言い続け、一般国民たちが楽しんでいる日本文化や風習を罪悪視してきた。だが、一方で既に定着し、万人が楽しみ、利用する除夜の鐘、葬礼風習などについては何の批判も、清算の声も聞こえてこない。自分たちにとって目障りな対象を叩きたい時だけ「日帝残滓」というレッテルを使っているのだ。

文大統領が言及した「親日残滓」も同じである。それは日本に対する無条件反射的な反発ではなく、韓国内の政治的敵対勢力を批判、非難するための政治的用途の「レッテル」だ。そのことを明確に示している事例は与党の院内代表である洪永杓議員に対する沈黙だろう。

文大統領は今年の3月「親日をしたら3代がぜいたくに暮らすという言葉がある」とし、「それを正すことが祖国のすべきこと」と発言している。しかし洪議員の祖父は 朝鮮総督府で中枢院参議を務めた人物で洪議員こそ代表的な親日派の末裔だ。にもかかわらず、彼は与党の幹部を勤めている。だが彼に対し「親日清算」とか「3代がぜいたくに暮らす」といった批判の声は上がらない。結局、親日残滓清算とは反対派にだけ限定される魔法のようなものだ。

私は韓国で日帝残滓、親日残滓の清算運動は簡単に終わらないと思う。なぜならば、それは日本と親日派が憎いからではなく、韓国人同士の争いの中で生まれた「憎しみの表現」に過ぎないからだ。

たとえ誰かがその残滓を一掃したとしても、韓国人は再び清算すべき新しい「日帝残滓」や「親日残滓」を作り出すだろう。自分たちの新しい敵を攻撃するために。