〔PHOTO〕立木義浩
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漫画家・村上もとかさんが好むウイスキーと作品の舞台

タリスカー・ゴールデンアワー24回(後編)

提供:MHD

⇒前編【村上もとかさんがいまさら『六三四の剣』を語るワケ】からつづく

(構成:島地勝彦、撮影:立木義浩)

シマジ: 「もとか」というのは変わった名前ですが、ペンネームなんですか?

村上: いえいえ、本名です。漢字では「紀香」と書いて「もとか」と読みます。

シマジ: 紀香だと、つい「のりか」って読んじゃいますよね。小さい頃はよく女の子の名前と間違えられたんじゃないですか?

村上: そうそう、昔からみんな「のりか」としか読んでくれないので、はじめから平仮名で「もとか」としたんです。ただ、ぼくの子供のころには、そもそもこんな名前自体がほとんどなかったので、からかわれたり、いじめられたりということはなかったですね。高校生になってはじめて、「おまえの名前って変わってるね」と言われました。

でも面白いことに、中国版のコミックでは村上紀香と漢字表記されているんですよ。

シマジ: ああ、そうか。中国では平仮名表記だと読めませんからね。

ボブ: 今日はわざわざ村上先生がいらしてくれたので、スペシャルボトルを開けましょう。クラガンモアの「ディスティラーズエディション」です。これは最後の半年を、アメリカンオークのバーボン樽からポートワイン樽に移し替えて追加熟成させたものです。

ではシマジさん、スランジと発してください。そのあとみなさんでスランジバー!と唱和しましょう。

シマジ: スランジ!

一同: スランジバー!

村上: うーん、これは美味しいですね。リッチかつまろやかな味わいです。

シマジ: いまは亡きマイケル・ジャクソンは10年前、これと同じクラガンモアのディスティラーズエディションに90点の高得点を付けました。「フィニッシュ:ミディアムだが、心地よく、まろやかでバランスがとれている。複雑で魅力的」と解説していました。

ヒノ: シマジさんは『モルトウィスキー・コンパニオン』を隅から隅まで暗記してるんですか。

シマジ: いやいや、ボブに電話して今日の特別ボトルは何かと訊いて、家を出る前に読んできただけだよ。それにしても90点というのは凄いことですよ。

立木: ボブ、撮影が終わったら、おれにも一杯飲ましてくれる。90点のモルトがどんな味なのか確かめてみたい。

ボブ: 立木先生、承知しました。

村上先生、いかがですか。スモークされた味と、かすかにピーチのようなフルーティさを感じませんか。

村上: ぼくはもともとラガヴーリンのようなスモーキーなモルトが好きなので、これはとくに気に入りました。そして、たしかにどこかピーチのような甘さを感じます。

ボブ: ありがとうございます。ラガヴーリンもわたくしどものモルトウイスキーです。しかも村上先生は相当のウイスキー通でいらっしゃいますね。

村上: いえいえ、血糖値を気にするようになってから、もっぱらウイスキー一辺倒になりまして。ボブさん、この甘さはフィニッシュのときにポートワインの樽から移った風味なんですか?

ボブ: そうです。この花のような香りもポートワイン樽の効果でしょうね。ウイスキーの風味は6割から7割は樽からくると言われています。

シマジ: 村上さんはいまでは仕事が終わるとタリスカースパイシーハイボールやラガヴーリンを悠々と飲んでいるそうですが、若いころはそれなりにご苦労されたんでしょうね。

村上: もちろんです。シマジさん、「連載貧乏」っていう言葉をご存じですか?

シマジ: 知りません。どういうことですか。

村上: 少年漫画誌で連載を持つと、最低でも4~5人のアシスタントが必要になってくるんですね。連載中は、その若いアシスタントたちにずっとご飯を食べさせて、もちろん賃金も払うことになるので、作家には莫大な出費が発生するんです。その連載が単行本になるまで、最低1年間は身を削る思いです。しかも、その作品が必ず売れるとは限らない。

ぼくの駆け出しのころはアシスタント分の机もなかったので、台所の床で書いてもらったことがありました。ぼくの場合は、ジャンプからサンデーに鞍替えしたころがいちばん辛かったですね。当時は6~7人のアシスタントを抱えていました。

むかしはコンビニもなかったから買い出しも本当に大変でした。まあ、うちのかみさんがいちばん大変だったと思います。毎日、何度も、一升釜でガンガンご飯を炊いていましたからね。むかしの子はよく食べたんですよ。

あるときなんか、原稿料をもらってもアシスタントに給料を渡しちゃうと、みんなの食費分が残らない。そこで、「みんな、悪いけど、いま渡したなかから1万円ずつぼくに貸してくれ」と頼んだこともありました。アシスタントたちは笑いながら「いいですよ」と言って、1万円ずつ貸してくれました。

シマジ: 感動的で泣けるエピソードですね。

村上: ぼく自身、アシスタントの期間は短かったけれど、こういうアシスタント経験がないと、その後、独り立ちした時に、人を使いこなせないんです。

ヒノ: 使われたことがないと人を使えないっていうのはよくわかります。

シマジ: ところで村上さんは、いまおいくつなんですか?

村上: 67歳で、まもなく68になります。

シマジ: そうですか。実年齢以上に若くみえますね。

村上: この歳になると、多少若作りしていないと編集者が安心して連載を任せてくれないんじゃないかと思ったりしています(笑)。

スペイサイド独特のエレガントで厳粛な味わい
クラガンモア ディスティラーズエディション
(CRAGGANMORE Distillers Edition)

スペイサイドを代表する蒸留所。ルビーポートワインの樽でダブルマチュレーションを行ったドラム(一杯)は、クラガンモアの持つモルティーでスモーキーなフレーバーとルビーポートワインの甘みが掛け合わされた複雑なフレーバーと、長くドライなフィニッシュを生み出します。