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大統領選・民主党候補のスピーチで感じた「アメリカ民主主義の底力」

橋爪大三郎の「社会学の窓から」⑭

タウンホール・ミーティングを観て

CNNのタウンホール・ミーティングを観た。4月22日(月)の午後7時から12時まで(東部時間)、5人の候補が順番に登場して、会場の質問に答える。元副大統領のバイデン候補は出馬表明前だったので、呼ばれなかった。ほかの注目候補が顔を揃えた。

まず、スケジュールを確認しておこう。大統領候補を絞りこむ民主党の予備選は、2020年の2月から本格化する。予定では、

2月3日 アイオワ州党員集会
2月11日 ニューハンプシャー州予備選
2月22日 ネバダ州党員集会
2月29日 サウス・カロライナ州予備選
3月3日 スーパーチューズデイ(全米12州で予備選)

…と続いて、6月16日のワシントンDC予備選が最終日となる。

それに先立ち、民主党が主催する正式な候補者の討論会が、2019年6月から月1、2回のペースで、来年4月まで開かれることになっている。下位の候補がつぎつぎ脱落していく、長丁場の過酷な選挙戦だ。

 

正式な討論会まで待てないと、ひと足先に、各種の団体やメディアが候補者を集めて話を聞く。そんな催しがこの3月から4月にかけて、何回も行なわれた。全員が集まるわけではないが、候補者にとっては有権者に訴えるよいチャンスになる。

CNNのタウンホール・ミーティングも、そんな機会のひとつだ。候補者が一人だけのときもあるが、4月22日には有力な5人の候補者が勢ぞろいした。会場はニューハンプシャー州。スタジオには近隣の大学の学生が招かれた。

法律家、上院議員エイミー・クロブチャー

最初の登場は、ミネソタ州の上院議員、エイミー・クロブチャー(Amy Klobucher)候補だ。58歳。イェール大学を卒業後、シカゴ大学ロースクールで学位をえた法律家である。

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父方はスロベニアからの移民、母方はスイスの出身。ユナイテッド・チャーチ・オブ・クライスト(宗派融合的なプロテスタント教会)のメンバー。父は新聞記者で、アル中を患い、母は小学校教員で、苦労して育ったという。

司会も会場の聴衆も、つぎつぎ質問する。学生の質問は、ステューデント・ローンの悩みが多い。ウォレン候補との違いはどこですか、と意地悪な質問もある。てきぱきわかりやすく回答する。気さくなおばさんという感じで、好感がもてる。そのわりに支持率が伸び悩んでいるのだが、選挙チームの足並みが揃っていないらしい。

学者タイプの、上院議員エリザベス・ウォレン

次は、マサチューセッツ州の上院議員、エリザベス・ウォレン(Elizabeth Warren) 候補だ。69歳。ラトガース大学で学位をえて法律家となり、ハーバード大学ロースクールなどで教授を務めた。商法(破産法)が専門。

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オクラホマ州で「中の下」の家庭に生まれ、父が心臓病になって家計が逼迫、16歳からウェイトレスをするなど苦労した。メソジスト教会のメンバー。

共和党支持だったが途中で民主党に代わった。政府や議会の仕事も手がけるようになり、オバマ政権では消費者保護に力を尽くす。2011年に上院議員となり、トランプ政権が成立すると対決姿勢を強めた。今年、トランプ大統領の司法妨害をめぐるマラー・レポートか出てからは、弾劾を開始すべきだと強く主張している。

ウォレン候補は、聡明で頭が切れる。学者タイプで本物だ。でも、女学校の校長先生みたいな雰囲気で損をしている。話は理屈が通っている。ただときどき、説明が長い。演説としてはいまいちだ。

教育ローンを低利にしよう、トランプの移民政策に反対しよう、マリワナを合法化しよう、富裕層から1ドルにつき2セントずつ徴収しよう、ミドルクラスをてこ入れしよう、などと自説をのべると拍手が起こった。

ウォレン候補は、ネイティヴ・アメリカンの血をひくのだという。トランプ大統領がそれを聞いて、DNA鑑定をしてそれが証明されたら、百万ドルを慈善に寄付してやるゾ、と挑発した。

ウォレン候補はそれならと鑑定を受けた。結果は、六世代ほど前に血が混じっていてもおかしくない、だった。そらみたことですか。するとネイティヴアメリカンの団体が、DNAがどうあろうと、部族の一員かどうかはわれわれが決める、と抗議した。ウォレン候補は、それはそうですとも、と謝罪した。筋を通すひとだと思う。