1983年12月、オックスフォード大で学友と談笑〔PHOTO〕著者撮影

新天皇が35年前のロンドン留学で私に見せた「意外な素顔」

当時の学びは今後にどう生きるか

5月1日に皇太子浩宮さまが即位し天皇となられた。

新天皇陛下(以下、馴染んだ「浩宮さま」という表現を使わせていただく)は、1983年から1985年、英国留学をしていたが、その際、私は通信社の特派員としてロンドンに滞在しており、浩宮さまと触れ合う機会を得た。

得難い経験をされたその英国留学時代の素顔を以下で紹介しよう。ウィットに富み、親しみやすい浩宮さまの姿が浮かび上がるはずだ。また、最近の出来事やご発言なども合わせて、新天皇像を探りたい。「平和主義」と「多様性」の尊重を基調に、新たな皇室外交が展開されることになろう。

 

「国際性」を学ばれた英国留学

「寮の部屋ごと、記念に持って帰りたい心境です」――。

1985年(昭和60年)10月、留学を終えての浩宮さまの率直な感想である。英国留学が充実したものだったと、心から感じていることがうかがえる。

英国という異文化に対しても決して気負うことなく、積極的に心を開いてその美点を吸収したのではないだろうか。

「再びオックスフォードを訪れる時は、今のように自由な一学生としてこの町を見て回ることはできないであろう。おそらく町そのものは今後も変わらないが、変わるのは自分の立場であろうなどと考えると、妙な焦燥感におそわれ、いっそこのまま時間が止まってくれたらなどと考えてしまう」(『テムズとともに』学習院教養新書)。

筆者は浩宮さまの英国オックスフォード大学留学時代(1983〜1985年)に時事通信のロンドン特派員として、浩宮さまを担当した。度々同大学を訪ねて取材したほか、英国王室との交流やヨーロッパ王族を訪ねる旅行や登山にも同行した。

1983年8月、エディンバラ城を見学〔PHOTO〕著者撮影

1983年8月、エディンバラ近郊の小高い山、アーサーズシート(アーサーの王座)に登られた際は、登山が得意でないカメラを担いだ筆者を気遣い、「大丈夫ですか?」と時折歩を止め、カメラアングルのよい見晴らしのいい場所ではポーズまでとってくださった。とてもやさしく、またフラットな趣があった。

そして「(御用邸のある)那須を思い出しますね。母から手紙が来ました」と懐かしそうに語った。美智子さまを深く尊敬されているようだった。

1984年1月、ヨーロッパの中心に位置する小さな王国リヒテンシュタインの皇太子に招かれた際も同行した。王宮の近くにはスキー場が広がっており、浩宮さまは皇太子らとスキーを楽しまれた。

東京の本社からは「浩宮さまのスキー滑走姿の写真を撮るよう」指示されたが、広いゲレンデで多くのスキーヤーがいる中で、あっという間に滑り下り、ファインダーに捉えることができない。困り果てていると、「おーい!」と大声がかかり、ゆっくりと滑りポーズをとってくださった。やさしい思いやりの気持ち、そして楽しく人と交わろうという思いがここでも伝わった。

オックスフォード大学では、普通にいる20代の若者と変わらず、自由と交友を謳歌されていた。Gパン姿で高級ディスコに入ろうとして断られたこともある。柏原芳恵やブルック・シールズのファンで、彼女たちの写真を寮の部屋に貼っていた。