意外!ソフトバンクが「空飛ぶ携帯基地局」をつくるたった1つの理由

Googleと狙うメガ市場の正体
西田 宗千佳 プロフィール

いまだ手つかずの肥沃なマーケットが

HAPSモバイルやLoonが目指すのは、インターネットがまだ普及していない国々に、インターネットアクセスを提供することなのである。

彼らの方式なら、広大な地域に携帯電話ネットワークを敷設するよりはずっと安く、かつ素早くサービスを展開できる。1国でのサービス開始にかかるコストは数十億円と見積もられているが、これは、通常の携帯電話インフラを整備するのに比べ、ひと桁からふた桁、予算規模が小さい。

宮川CTOは、ビジネスの狙いを次のように説明する。

「現在のモバイルネットワークビジネスの市場規模は、全世界でおよそ、月に100兆円程度です。しかし、インターネットが自由に使える人々は、全世界でまだ半分程度しかいない。では、残りの半分にサービスを提供するとすればどうでしょう?

さすがに同じマーケット規模にはなりません。最初は、一人あたり毎月1ドルくらいでしょうから、日本円にして4兆円ほどです。その国の成長にもよりますが、一人あたりの支払いが1000円程度になれば、40兆円の市場が生まれます」

インターネットを全世界のあらゆる地域に提供し、そこを今後の肥沃なマーケットとすることが、HAPSモバイルの狙いなのである。

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  インターネットに接続可能な人々は、現在でも、地球上の全人口の半分にすぎない。「残り半分にどうインターネットの価値を提供するか」が、これからの課題になる

あるか、ないか──それが大きな問題だ

それらの地域から大きな収益を得られるようになるには当然、それなりの時間がかかるだろう。だから、当面は低コストで効率よく運用する必要があるのだ。

そのためには、HAWK30のような航空機や、GoogleのLoonのような気球に代表される、低コストな方法が有利……という発想なのである。高付加価値なサービスが成立する先進国とは異なり、通信速度の面では限界があるが、それでも「ある」のと「ない」のとでは大きな違いがある。

また、先進国でもこうした技術が必要な場所が存在する。──「人が住んでいない場所」だ。

現在の携帯電話のカバーエリアは、「人が住んでいる地域」をベースにつくられている。だが、農地や山林の管理などを考えると、ふだんは人が住んでいないところにも、通信機器を設置する必要がある。

旧来の考え方では、こうした地域を通信エリアに入れるのは採算性の問題があるが、HAPSモバイルのような方法であればカバーは容易だ。センサーを軸にしたIoT機器なら転送するデータ量も少なく、通信速度もそこまで必要ではないので、HAPSモバイルの通信特性にも合う。

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  人の住まない地域でもネットは必要に。カバーエリアを効率的に広げるには、先進国であってもHAPSのような技術が必要になる

問題は、こうしたサービスで収益を得られる企業は決して多くはないだろう、ということだ。だから、LoonとHAPSモバイルは事業提携し、ともにビジネスを進める道を選んだ。

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  ソフトバンクとGoogleは提携し、ともに成層圏を使ったインターネットサービスの提供を目指す

「方法論は違っても、同じ山に登る者どうし。独占を目指す事業でもないし、ぶつかりあってもしょうがない」と宮川CTOはいう。

方法論が定まったビジネスではないだけに、相互に情報を提供しあい、効率的なビジネスを目指すことで、未開拓な通信市場を肥沃な市場へと切り開こうとしているのだ。