意外!ソフトバンクが「空飛ぶ携帯基地局」をつくるたった1つの理由

Googleと狙うメガ市場の正体
西田 宗千佳 プロフィール

都市部の通信需要は満たせない

もう1つの問題は、通信速度と収容可能な携帯電話数の制限だ。

携帯電話のネットワークは、多くの人で同じ帯域の電波を共有している。1つの基地局でカバーできる人の数は数千人以内であり、その人数で電波を分け合って使うしくみだ。

都市部では、数百メートルしか電波が飛ばない小さな基地局を大量に重ね合うように設置することで、膨大な量の通信ニーズをカバーしている。半径20kmをカバーするような巨大な基地局は、意外と少ないのが実情だ。だから、日本全体では数万を超える数の基地局が必要になる。

すなわち、空に広いエリアをカバーできる基地局を置いたとしても、日本などの先進国・都市部では、じつはあまり役に立たないのだ。先ほど、日本がカバー範囲に入るのは「2025年以降」と説明したが、HAPSはそもそも、日本でガンガン使うことを想定した技術ではないのである。

この点は、気球を使うGoogleの「Project Loon」も、事情は変わらない。HAPSモバイルやLoonは、現在の主流となっている「第三世代携帯電話(3G)」「第四世代携帯電話(4G)」技術を使う前提で開発が進められている。

より技術の進んだ「第五世代携帯電話(5G)」になれば、収容量や速度の面で改善は見込めるだろう。とはいえ、5Gになればなったで、通信の需要はさらに大きなものになっていくので、「都市部をカバーするには厳しい」という事情に、大きな変化は生じそうにない。

じつは格安予算のプロジェクト

ならば、HAPSモバイルやLoonは、いったいどこで使われる技術なのか?

ヒントとなるのは、冒頭でも紹介した、ソフトバンク・宮川CTOの次の言葉である。

「HAPSモバイルは、みなさんが思うほどお金がかかっていません。それに、本質的にはお金をかけてはいけないビジネスなのです」

【写真】
  計画の責任者である、ソフトバンクの宮川潤一CTO

宮川CTOによれば、HAPSモバイルへの技術投資は、これまでの2年半で「70億円」程度だという。絶対的な金額としては大きなものだが、「新規の航空機開発を伴う事業」であることを考えれば、きわめて少額だ。軍用機や新型旅客機となると「数兆円」単位でお金が飛んていくことを考えると、かなり安い。

HAWK30の価格も「フェラーリ10台分くらい」(宮川CTO)というから、数億円以内だろうか。高級自家用機程度で、プライベートジェットの10分の1もしない。

「成層圏を携帯電話の圏内にする」という計画の壮大さを思えば、費用は控え目、といってもいい。

なぜ、「お金をかけてはいけないビジネス」なのか?