意外!ソフトバンクが「空飛ぶ携帯基地局」をつくるたった1つの理由

Googleと狙うメガ市場の正体
西田 宗千佳 プロフィール

災害時も途切れない理想的なネットワーク

空から携帯電話の電波を降らせることで、地球上から「圏外」をなくす可能性のあるHAPS技術は、きわめて魅力的なものに見える。日本のような自然災害が頻発する国や地域では、地上の被災状況に左右されることなく、通信サービスを提供・享受できるメリットは大きい。

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  空から通信を提供できれば、災害時にも持続的なサービスの提供が可能になる

だが、もちろん欠点も多い。

我々が日常的にお世話になっている「携帯電話ネットワーク」の代替物になるか、といえば、決して“そういうもの”ではないのだ。

まず突き当たるのが、「HAPSを実現するための航空機の製造・確保が大変だ」という壁だ。空に浮かぶ携帯電話基地局を実現するには、「長いあいだ同じ場所を飛び続ける」航空機をつくらなければならないが、軍用機のように空中給油をしていたのでは、とてもではないが費用がもたない。太陽電池を使って、数ヵ月単位で「飛び続ける」機体をつくる必要があった。

ソフトバンクは、2017年にHAPSモバイルを子会社として設立し、ビジネスの準備を進めてきた。課題は、肝腎の成層圏プラットフォームとなる航空機の開発だったが、アメリカでドローン開発などを手がけるAeroVironmentと共同で技術開発を進め、実用的な成層圏プラットフォームである「HAWK30」の開発に成功した。

機体量産のメドがついたことから、今年になって事業計画を発表した……という経緯があるのだ。

日本でサービス導入できない! ……そのワケは?

HAWK30を開発するうえで課題となったのは、太陽電池と充電用バッテリーの技術である。今回開発した太陽電池とバッテリーがあって初めて、数ヵ月間飛び続けつつ、携帯電話の基地局として電波を発信し続けられる無人航空機が実現できる。特に、無線基地局として働くために使われる電力が大きく、それをどうカバーするかがポイントだ。

ただし、今もなお、課題は残っている。

HAPSモバイルは2023年にサービスを開始する予定だが、当初、日本やアメリカなどはサービスエリアに含まれない。両国は、HAWK30が飛ぶのに適していないためだ。

効率よく太陽電池で発電するには、太陽からの光が太陽電池に垂直に近い角度で入ってくる時間がより長い、赤道付近のエリアのほうが有利である。緯度が30度を超える地域では、特定の季節を除くとバッテリーを充電するための時間が足りず、電力が不足する。そのため、緯度の高い日本でのサービス導入は難しいのだ。

日本でのビジネス展開は、次世代機である「HAWK50」の完成か、あるいは、太陽電池とバッテリーがさらなる進化を遂げるか、どちらかを待つ必要がある。現在の目算では、それは2025年以降になる予定だ。

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  現在のHAWK30は、電力供給の問題から赤道付近での運用に限られ、日本などをカバーするには、2025年の運用開始を目標としている次世代機が必要になる