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# 経済・ビジネス

便利になった羽田空港を取り巻く「課題とリスク」

未来の空旅はどう変わるか・その7
国際線も多数発着するようになった羽田空港。どこまで乗り入れを許可するか? 空港へのアクセスは不便ではないか? 都心の上空ルートの解禁は大丈夫なのか? 首都大学東京特任教授の戸崎肇氏が、航空の現況と今後の展望・課題について利用者目線から追っていく、連載第7回!

羽田空港はインバウンドに役立つか?

2020年に4000万人、2030年に6000万人、という政府のインバウンド観光客の誘致目標の達成は果たして可能なのだろうか?

その大きな鍵の1つを握るのが日本の空港政策である。今回は大都市の空港、特に羽田空港を中心に、その現状と課題を見てみよう。

 

日本の空の玄関で一番の需要があるのが羽田空港だ。1978年、成田空港が開港して以来、羽田空港は基本的には国内線専用空港として運用されてきた。その後、アジア各国も経済発展を遂げていく中で、大規模空港を建設し、アジアのハブ空港としての地位をめぐる競争が繰り広げられるようになった。

一方、地元住民との間で歴史的な問題を抱える成田空港は、騒音に対する配慮から夜間の運用ができず、24時間運用が求められる国際ハブ空港としては全く見劣りがする状態にあると見なさざるを得なかった。

依然として空港の存在に反対する人々が空港敷地内に保有する建築物のために、長距離滑走路が1本しか機能しないという、致命的ともいえる供給制約の状態を強いられてきたからだ。

「空港が先か、経済が先か」という問題はあるが、このままでは周辺アジア諸国のハブ空港にアジアの航空ネットワークの中心的地位を奪われ、それに伴って経済力も低下していくのではないかとの懸念が経済界を中心に示されるようになった。

成田空港への相乗効果も

こうした危機感を受け、2007年、第1次安倍内閣は「アジア・ゲートウェイ構想」で羽田空港を再度国際化することを決定した。そして、桟橋方式によって羽田空港に第4滑走路の建設も行い、その完成をもって、2010年10月、32年ぶりに国際線の定期便を復活させた。

当初は競合関係になることを懸念する成田空港への配慮から、ペリメーター規制(羽田空港から国内線で最長となる路線の長さの範囲内に位置する海外の空港までの路線のみの就航を認めるという取り決め)や、成田の運用時間帯で処理できない便を就航させるなどの措置をとっていたが、そうした政策も次第に見直されていった。

政策の見直しは結果的には成田空港側にもいい刺激をもたらした。成田空港の存在に反対だった人々も、羽田空港の再国際化によって成田空港の地位が低下し、それによって地元経済が衰退することを恐れ、成田空港の競争力向上に積極的に取り組んでいくこととなる。

たとえば、夜間の運用時間帯を見直し、より長く空港が運用できるようにすることや、LCCやビジネスジェットを積極的に受け入れたりする、といったことである。そして最近では、第3滑走路を建設することが予定されている。

成田空港には様々な制約がある(photo by iStock)

これに似たような事例は他にもある。関西国際空港が開港するに当たって、当初は大阪にある伊丹空港は廃港にすることが前提となっていた。

伊丹空港といえば、その騒音問題をめぐり、激しい住民闘争が行われたことで有名である。しかし、廃港の方針が打ち出されることによって、そうした情勢も一変する。