衝撃…!中国の辞書と音楽から突然「自由」の二文字が消えた

天安門事件への恐れか?
古畑 康雄 プロフィール

若者の怒りを飲み込む体制

この曲を作詞作曲し、メインボーカルだった汪峰(ワンフォン)には2000年と06年、北京で2度インタビューしている。

初めて会った時は、バンドを解散した直後で、トレードマークの長髪に縁の厚い黒メガネを掛け、約束したバーに1人で現れた。だが06年に会った時には彼はずっとおしゃれになり、車に乗ってマネージャーを引き連れていた。

汪峰はバンド解散後、「在雨中(雨の中で)」のような「ロック歌謡」に転向、「我愛你中国(中国、あなたを愛する)」のような中国の愛国主義に沿った曲を出すなど、その立ち位置を変えていった。

その後はオーディション番組の審査員のほか、有名女優の章子怡(チャン・ツィイー)と結婚し芸能人として成功を収めたが、今の彼には興味がない。ネット上の書き込みでも「『小鳥』は今聞いても素晴らしい」との称賛がある一方、「今の汪峰はあまりに安逸な生活を送って、この歌にはもはやふさわしくない」とのコメントがあった。

汪峰を取材したのは、中国ロックと政治や社会の関係を探る記事を書くためだった。中国にも1960年代の米国のロックやフォークのような、若者の社会や体制への意見表明、抗議という要素があった。しかし当局の圧力と商業主義の中で、ロックは徐々に変貌し飼いならされ、自分も記事の中で「中国の体制と商業主義は、若者の怒りを貪欲に飲み込んでいった」と書いた。

だがこうした状況でも、自分のスタイルを守り続け「生きた化石」とも言われる崔健のような、少数派のミュージシャンも残っている。

その1人、李志(リージー)というミュージシャンの名前を知ったのは、実は最近のことだ。彼のコンサートが突如キャンセルされたという報道がきっかけだった。

知人で著名な自由派知識人の栄剣(ロンジェン)氏もツイッターでこのほど「人民には果たして自由が必要なのか不要なのか」と次のように書き込んだ。

 

「人民に自由は不要」がNG

「李志という歌手について、私は数日前まで全く知らなかったが、ここ数日ネットで大きな話題となっている。だが今、この若者が『行為不端(品行が良くない)』という理由で歌うことを禁止されたこと、そして『人民は自由が必要』といってもダメだし、『自由が不要』といってもだめだということを知った。」

栄の言う「人民は自由が必要」とは李志の「人民不需要自由(人民に自由は必要ない)」という曲のことで、「人民に自由は必要ない。今は最も素晴らしい時代だ」と歌う、いわば政府による押し付けの「幸福な社会」を揶揄する内容だ(本人はメディアのインタビューで政治や反抗といった意味はなく、後に政治的な解釈がされたと述べている)。

映像有り:youtubeより

報道によれば、李志は1978年、江蘇省生まれのフォークミュージシャンで、2004年にレコードデビュー。2017年に全国334の地方都市を回る「334計画」というコンサートを開始したが、四川省の文化観光部門は4月3日、「行為不端」を理由に李が四川省で予定していた23カ所のコンサートを中止すると発表した。

事件を知り、自分も中国の友人に李志についての文章を紹介してくれるよう頼み、彼は微信で何本か送ってくれたのだが、翌日にはいずれも削除され閲覧できなくなった。

ウェブサイト「中国数字時代(チャイナ・デジタル・タイムズ)」によれば、当局は彼の「人民不需要自由」のほか、天安門事件を連想させる「広場」などの曲を音楽ダウンロードサイトから削除するよう命令したという。

ラジオ・フリー・アジアによれば、この「広場」は天安門事件に関する海外のサイトにも登場しており、他にも天安門事件を連想させる他のミュージシャンの歌曲が禁止されたことも含め、当局の対応は事件から間もなく30年を迎えることから、事件に関連した政府批判の動きが広がることを防ぐ狙いがあったとみられる。