中華恐竜園での2019年の新年を祝うイベント Photo by Getty Images

盗掘・密売の一方で…日本人研究者に訊く「中国恐竜、ここがスゴい!」

「恐竜大陸をゆく」特別編!
盗掘が横行する一方で、世界的研究者も次々と輩出されるという中国の恐竜事情。いったいどういうことになっているのか、現地のトップ研究機関で学ぶ日本人に改めて事情を教えてもらう特別企画!

本連載ではこれまで、さまざまな角度から中国の恐竜について取り扱ってきた。

そのなかからは、大量の羽毛恐竜をはじめとした多種多様な恐竜の発見、社会主義革命や文化大革命にも負けず脈々と受け継がれてきた研究の伝統、そして負の面としての盗掘・密売の横行……といった、中国という国ならではの特徴がいくつも浮かび上がる。

だが、これらについて現地で恐竜研究をおこなう専門家はどう感じているのか? そこで今回は、中国恐竜学の重要拠点のひとつ・中国地質大学の博士課程で学ぶ日本人の若手恐竜研究者・黒須球子(まりこ)さんに「内部の視点」から見た中国恐竜事情を尋ねてみることにした。

従来、恐竜研究のための留学といえばアメリカやカナダを目指すのが一般的だったが、近年は中国を目指す若手研究者も少数ながら生まれはじめている。黒須さんの専門は獣脚類恐竜であり、羽毛恐竜を含む獣脚類がさかんに出土している中国は、ぴったりの場所だったようだ。

中国の恐竜学、その水準は?

――中国では1990年代以降、いわゆる羽毛恐竜をはじめとしたユニークな古生物化石の発掘ラッシュを迎えています。いっぽう、古生物学のアカデミズムの水準は、国際的に見て「高い」と評価できますか?

高いと評価して良いと思います。1990年代以降の中国の古生物学は、羽毛恐竜に代表される遼寧省の熱河生物群や雲南省澄江のカンブリア紀澄江生物群の再発見、貴州省甕安エディアカラ紀の地層の驚くべき胚胎化石の発見など、世界的なニュースが相次ぎました。

ミクロラプトル北京の自然史博物館で展示されている小型獣脚類ミクロラプトルの化石標本

古生物学における中国のなによりの強みは、まずこの豊富な化石の存在だと思います。

日本ではほぼ見ることのできない、カンブリア紀やエディアカラ期の生物を見ることができるのも魅力ですね。

――なるほど。恐竜時代(中生代)はもちろん、古生代の化石にも見るべきものが多いわけですね。

もうひとつは、充実した研究施設の存在だと思います。中国国内の最も主要な古生物研究所としては、脊椎動物ならば北京の中国科学院古脊椎動物・古人類研究所(Institute of Vertebrate Paleontology and Paleoanthropology)、無脊椎動物や植物・微化石ならば南京の中国科学院南京地质古生物研究所(Nanjing Institute of Geology and Palaeonotology)の2施設があります。

中国語では、北京の研究所を「北古所(Běi gǔ suǒ)」、南京の研究所を「南古所(Nán gǔ suǒ)」と呼んでいます。これらの研究所は大学院大学の役割も兼ね備えており、入学試験も相当難しいんです。

それでも毎年何人もの優秀な研究者が2つの研究所から輩出され、全国の大学、研究所、博物館などに配属されています。

資金面で後れを取る日本

――日本の恐竜研究は、中国と比較してどうでしょうか?

日本の中生代陸生脊椎動物化石の埋蔵量は、世界的に見るとあまり恵まれているとは言えません。また研究拠点の数についても、国内に膨大な研究所・大学・博物館・ジオパーク(地質公園)を抱えている中国にはどうしても後れを取ります(近年、日本でも研究施設が劇的に増えてきてはいますが……)。