腰痛に悩んだら「マインドフルネス・ウォーキング」を始めるべし

「心療整形外科」を始めた医師が説く・第3回
谷川 浩隆 プロフィール

マインドフルネス・ウォーキングのすすめ

マインドフルネスとウォーキング、この二つを結びつけられないだろうかという視点から考案したのがマインドフルネス・ウォーキングです。

マインドフルネス・ウォーキングでは、まず背筋を張って、おおまたに、それでいてからだが緊張しないように楽な気持ちを保ったまま少しスピードを上げて歩きます。

ウォーキングは決して足だけのトレーニングではありません。全身の筋肉を使うのです。歩くということは下半身の運動だけではなく、上半身にも、さらには脳や気分にも影響する全身的な治療なのです。

せすじを伸ばして行進のように手を大きく振って歩けば、背中から肩甲骨、両腕や首まわりの筋肉にとてもよい運動になります。この時に決して筋肉が緊張しないようにしてください。ウォーキングは肩のストレッチや筋トレにもちょうどよく、からだ全体の筋肉を使うので腰痛だけではなく肩こりにもよく効きます。

ジムなどにあるウォーキングマシンで黙々とトレーニングするよりも、できれば公園や川べりなどの周囲の景色を見ながら歩くことをお勧めします。風景という目からの刺激は副交感神経の働きを高め、ウォーキングによる運動が適度に交感神経に作用して自律神経が整えられていきます。

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この時「歩きながらのマインドフルネス」を意識してみてください。歩きながら気持ちを平穏にして、歩くことに集中するのです。過去と未来に対する拘泥を頭の中から追い出し「今」に集中しましょう。これが、患者さんに奨めているマインドフルネス・ウォーキングです。

目の前で起こっている事、「信号が赤になった」「公園で人が休んでいる」こんなこともそのまま受け入れてください。過去や未来の雑念を捨てて、今に集中してウォーキングをすれば、うっかり人とぶつかったり、赤信号を渡ったりするようなこともありません。

あとで「どこを歩いていたか思い出せない」ようでは、まだ頭の中の雑念にとらわれている証拠です。「こころ、ここにあらず」ではなく、こころをここに引き留めてください。

外が寒かったり、雨の日であれば家の中で足ぶみをしながら、メンタルをこのようにもっていってください。腰痛だけではなく、気持ちも切り替わってくるはずです。

万歩計や活動量計の活用は意欲の向上に役立ちます。最近は、単なる歩数の計測ではなく、運動強度や活動量を測れるものが数千円で販売されています。またスマホにも活動量計の機能があるアプリがあります。どれくらい運動したかがフィードバックされることにより、ウォーキングに対するモチベーションが維持されます。

ただしウォーキングの最中に計測機械をちらちら見ないほうがいい。数字を確認するのはウォーキングが終わった後にして、ウォーキングの最中はあくまで「今」に集中してください。

速歩は中程度の運動量になります。それが毎日20分を超えるようになればしめたものです。運動量と痛みを日記につけていくのも、腰痛に対する立派な認知行動療法です。

運動をして痛みを治す

歩くということは「やってもらう治療」ではなく「自分でする治療」。気分は前向きに積極的になってきます。「なんで治らないんだ」という「自分以外」のことに対する批判や怒りの感情を制御できれば、その次は「自分の中」を見つめることができるようになるはずです。

「痛みがしっかり治ったらウォーキングしたい」という患者さんがいますが、それではダメです。「運動をして痛みを治す」のです。動かさないと治らないのだから「治ってから動かす」と言っていたら、あなたの痛みは百年たっても痛いままです。

私はウォーキングをあげてみましたが、どんな運動がいいか考えないことです。なんでもいいのです。買った本に書いてあったエクササイズでもいいのです。

「この運動はいいのかな、悪いのかな」などと考えていないで、とにかく今日から、今から、体を動かしてみませんか。

谷川 浩隆
1962年松本市生まれ。信州大学医学部卒業。癌研病院、信州大学などに勤務後、安曇総合病院副院長。医学博士。1998年から、整形外科の臨床をしながら精神科の研修を受け、腰痛、肩こり、関節痛などの運動器疼痛をめぐる心身医学的アプローチの臨床と研究に従事、「心療整形外科」を提唱。2007年~信州大学医学部臨床教授。2013年7月に谷川整形外科クリニックを開設、院長に。著書に『腰痛をこころで治す 心療整形外科のすすめ』(PHPサイエンス・ワールド新書)がある。