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腰痛に悩んだら「マインドフルネス・ウォーキング」を始めるべし

「心療整形外科」を始めた医師が説く・第3回

私は現役の整形外科として、「心療整形外科」として、これまでに2回、当欄で、ウォーキングをすることで、腰痛を「自分で改善する」方法を書いてきました。

第1回 腰痛は「ウォーキング」で、なぜ良くなるのか?https://gendai.ismedia.jp/articles/-/59410

第2回 脊柱管狭窄症が、「歩くだけ」でなぜ良くなったのか? https://gendai.ismedia.jp/articles/-/59484

今回は、歩くときに、より効果が期待できる「こころの持ちよう」を説明します。まずは、私のクリニックを訪れた慢性的な腰痛に悩んだ患者さんの話から。

腰痛の時してはいけないこと

50代の女性、Dさんは骨粗鬆症で治療をしていましたが、その影響もあって慢性的な腰痛にも悩まされていました。

腰痛を研究するためにインターネットで調べたり、話題の本を買って読んだりと勉強熱心な方です。本やインターネットにはきわめて特殊な体操や食事、首をかしげるような治療法など、たくさんのことが紹介されています。

「ウォーキングはからだによい」と書かれた本がある一方で、ある週刊誌では「歩くことは体に悪い」という記事があったということで困っていました。

ふつう、腰痛や骨粗鬆症があると、あまり動きすぎたら腰をよけいに悪くしたり骨折を起こしたりするのではないかと、患者さんは心配になり「やってはいけないことはなんだろうか」と考えてしまうものです。

ある時、Dさんは私に心配顔で「先生、骨粗鬆症と腰痛がある患者にとって、してはいけないことは何ですか?」と質問してきました。

こういった質問はたびたび受けますが、私は、この質問に対する「絶対に間違いのない解答」を一つ用意しています。

「腰痛の時にしてはいけないことがたった一つだけあります。それは『してはいけないことを考えること』なんですよ」

私はさらに続けてこう話しました。

「Dさんは勉強熱心で素晴らしいのですが、あまり頭の中で難しいことを考えない方がいいですよ。わけのわからない特殊な体操に精を出す時間があったら、まず無心になってからだを動かしてみてはいかがでしょう! 

まだ50代、はげしい運動だっていいんですが、簡単なジャンプやスロージョギングでもいいんです。

『腰痛が治る決め手の体操がネットに書いてあったけど』などと考えず、からだを動かしている今の自分だけを感じながらゆっくりジョギングをするんです」

それからDさんは家事の合間に1日1~2キロメートルのスロージョギングというか速足のウォーキングのようなことを始めました。

すると次第に心配事が頭に浮かばなくなったそうです。腰痛もほとんど感じなくなり気持ちが晴れ晴れしてきました。やがて薬の効果とスロージョギングの効果が合わさって骨密度までもがずいぶん良くなってきました。

からだは動かさないと痛くなるようにできている

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からだを動かすには気持ちが前向きでないといけません。「あれをしてはいけない」「これをしてはいけない」というような消極的な気持ちがあったり、「運動なんてどうせムダ」と思っていると、腰痛は確実に悪化します。

腰や肩、関節といった運動器が痛む疾患は内臓の病気と比べて、命に関わるような深刻なものはさほど多くありません。それにもかかわらず、医者にかかって病名を告げられレントゲンの説明をうけることによって、不安になったり怖くなって、からだを動かさなくなってしまうのです。

「すべり症なのに腰の運動をしてもいいでしょうか?」とか「腰部脊柱管狭窄症でも歩いてもいいのでしょうか?」という質問を患者さんから受けます。

「~てもいい」かどうかではありません。

「動かなければいけない」「歩かなければいけない」という「~なければいけない」が正解です。

腰や肩、ひざの関節などに運動器痛があると、痛いからからだを動かさなくなります。しかし人間のからだは、動かさないともっと痛くなるようにできています。

からだを動かさないでいると筋肉はかたくなり、関節は拘縮して血行が悪くなります。痛み物質が筋肉内に蓄積され、さらに痛みが強くなってからだを動かすことができなくなるという悪循環です。

運動器の病気はからだを動かすことが治療の第一歩です。この時重要なのは動かし方に、「これが正解であれはダメ」というものがないことです。重要なのは「とにかく動かす」ということです。

『腰痛診療ガイドライン』でも、次のような結論が出されています。