「失われた30年」を体感した経済ライターが、令和に切に願うこと

「凋落の時代」は覆せるのか…
嶺 竜一 プロフィール

「時価総額」上位14社を日本企業が占めていた頃

平成とは、日本経済が凋落した時代だった。1989年、世界のすべての企業の中で、時価総額上位20社のうち14社を日本企業が占めていたことを知っているだろうか。

下表は、1989年、つまり平成元年の世界の時価総額ランキングだ。

出典:週刊ダイヤモンド2018年8月25日号

世界で最も巨大な企業は、NTTだった。驚くなかれ、日本国内の電話回線会社に過ぎない会社が、圧倒的に世界一の大企業だったのだ。

2位以下には日本の都市銀行がずらり。これらの銀行は再編によって、そのまま残っている名前は一つもない。

金融以外では、トヨタ自動車、新日本製鐵、日立製作所、松下電器産業、東芝が世界TOP20にランクインしている。特に日本の家電メーカーは当時、アメリカの巨大企業GE(ゼネラル・エレクトリック)をも追い越し、世界に君臨していた。

 

PanasonicもTOSHIBAもHITACHIもSONYも世界ブランドだったこの頃、日本企業は競ってアメリカの有名な企業を買収しまくり、家電メーカーはアメリカの映画会社や音楽会社を次々に買収していた。

確か島耕作シリーズのどこかで、初芝電器(松下電器産業がモデル)が米国企業を買収する話が出てきたと思う。実際、松下電器産業はアメリカを代表する映画会社ユニバーサルを傘下に持つMCAを、1990年に当時の日本企業で最高額となる7800億円で買収している(しかし1995年に持株の80%をシーグラム社に売却)。

嗚呼、昭和の日本はなんと凄かったのだろうか。当時、世界の名目GDPの2位は日本で、GDPは人口が2倍以上いるアメリカの6割程度だったわけだが、日本企業の存在感は米国企業を上回っていた。

現在、日本の名目GDPは世界3位で、米国の4分の1、中国の3分の1程度に落ち込んでしまった。

ちなみに1989年の中国の名目GDPは日本の6分の1以下で、ドイツ、イギリス、フランス、イタリア、カナダより下だった。それから30年で中国のGDPはおよそ30倍に成長する。

昭和ノスタルジーに浸るのはその辺にしよう。さて、もう一つの表が2018年、平成30年の時価総額ランキングだ。

出典:週刊ダイヤモンド2018年8月25日号

悲しいかな、トップ20に日本企業の名前は一つもない。上位5位はもはやおなじみのGAFA+マイクロソフト。3位のアルファベットというのはグーグルの運用会社、6位のパークシャー・ハサウェイとはウォーレン・バフェットの投資会社だ。

それに、TOP20に中国企業が4社、韓国企業が1社入っている。目をそらさずに、じっくり眺めてみてほしいと思う。世界を席巻したメード・イン・ジャパンを象徴する家電メーカーが、韓国のサムスン電子にゴボウ抜きにされてしまったという事実も含めて。

なぜこんなことになってしまったのか。時価総額を見比べてもらえばわかるが、上位企業の時価総額はこの30年で、およそ10倍規模になっている。日本企業が時価総額を下げたわけでは決してない。日本企業が伸びずにいる間に、世界の成長企業にすっかり抜き去られてしまったのだ。

先日、日本の株式市場の時価総額が香港に抜かれ、世界4位に後退したというニュースがあった。私には衝撃的だったのだが、しかし世間はそれほどこの重要な話題に触れない。もう日本は、経済立国を諦めてしまったのだろうか。

日本経済の停滞を示す事実はそればかりではない。

世界のトップ20はこの30年でおおよそ入れ替わった。世界のトップ10は、30年前には姿も形もなかった会社ばかりだ。

アマゾンの設立は1994年、グーグルの設立は1998年、フェイスブックの設立は2004年。中国のIT企業アリババの設立は1999年、同じく中国のIT企業テンセントの設立は1998年である。アップル、マイクロソフトを含め、IT企業が世界を席巻している。