島沢優子さんは、自身も大学時代に女子バスケット全国優勝経験があるジャーナリスト。長らく教育の現場を取材し、『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実』『部活が危ない』『世界を獲るノート』など数多くの著書がある。

今まで様々な指導者に出会い、子どもたちを伸ばす教育や育児について実感するとともにエビデンスを学んできた。保護者に向けた講演会にも引っ張りだこで、保護者の悩みも聞いてきている。その島沢さんが提案するのが、今までの凝り固まった思想から一歩踏み出した「アップデートした子育て」だ。新連載「子育てアップデート~子どもを伸ばす親の条件」にて、具体例と共にお伝えしていく。

有名国立大学卒と難関私大卒夫婦。そんな高学歴の親が陥ってしまった子どもを追い詰める育児とは。

数日おきにパトカーが来る家

淡いブルーのロングワンピースに身を包んだショウコさんは、都内に住む40代のパート社員。高校生2年の長女(17)と中学2年の長男(14)がいるとは思えないほどスタイルがいい。ただ、化粧っ気のない顔は明らかに憔悴している。

疲れていますか?と尋ねると、間髪いれずに言った。
もちろん疲れてますよ。数日おきにパトカーが来るんですから

えー?ご近所で何か事件でも?

「主人が呼んじゃうんですよ」

彼女は堰を切ったように話し始めた。

息子がね、主人に何か言われるとすぐ暴れるんです。

理由?うーん。ま、ハッキリ言えば、高偏差値のA大学を出た主人(50代)は、勉強ができない息子が気に入らないんですよ。「おまえはろくに勉強しない」とか、「こんな成績でどうするつもりなんだ」とか、「少しは努力しろ」とか。お説教すると、息子が腹を立てるわけ。

息子?何も言い返しませんよ。ただ、ムスッとしてる。「おまえ、聞いてんのか?」って主人に聞かれると、「うるせえ」ってなって、暴れ出すんです。
いや、主人や私には手出ししません。壁を、ほら、こうやってグーパンチして壊すとか、椅子を蹴り飛ばすくらいかな。

――え?それだけで旦那さん、警察呼んじゃうんだ。

そう。110番、得意ですから。ちょっとでも息子が暴れると。「14歳の息子が暴れていて、危害を加えられそうになっています」って。そう言われると、警察は何度でも来るんです。3回目くらいからはサイレン音鳴らさないで来るようになりましたね。あー、またですか?って感じ。

有名国立大卒と難関私大卒夫婦

ショウコさん夫婦は、世に言う高学歴親だ。

「夫ほどではないが」難関の私大を出て別の外資系企業でバリバリ働いていたショウコさんは、有名国立大学を卒業し外資系の金融関係に勤務していた5歳上の夫と20代後半に結婚。長男が小学校高学年になってパート勤務を始めている。

結婚前から忙しい夫だったが、子どもが生まれてからはさらに激務に。家事、子育てはショウコさんが一人で担った。専業主婦とはいえワンオペ育児は苦しいものだ。彼女が夫に協力を求めたら、こう言われた。

働かざるもの、食うべからず

自分は仕事をしている。家のことは仕事をしていない妻がやるものだ、と主張してきた。

私も、同じ外資にいたじゃないですか。仕事がハードなのはよくわかっています。会社に泊まるのもしょっちゅうだし。だから、もう子どものことは自分ひとりでやるしかないと、そこで思いました。

子どものいじめ問題。ご近所とのトラブル。長女の思春期や不登校。いかに自分が困難をひとりでくぐり抜けてきたかを切々と語ってくれたが、そこに夫が問題解決に介在した形跡はほとんどない

いや、逆にそのほうが良かったのだ。ショウコさんは「主人がかかわってくれないほうがまだマシだった。お給料を運んでくれる人、という感覚で割りきっていたのに」と語っている。