『わたし、定時で帰ります。』公式サイトより

「人生再設計第一世代と呼ばないで」ドラマ『わた定』原作者の思い

「なかったこと」にされないために
先月、安倍首相が現在30代半ばから40代半ばの「就職氷河期世代」に向けた支援策を検討することを発表した。名称を「人生再設計第一世代」に変更することや、地方への人材移動の促進などに、「名前を変えればいいってもんじゃない」「地方に追いやるのか」といった批判がネット上に溢れた。

そんな就職氷河期世代の思いを代弁したドラマとも言えるのが、『わたし、定時で帰ります。』(TBS系)だ。原作の著者であり、自身も就職氷河期世代である朱野帰子氏は、与えられた「人生再設計第一世代」という名称に複雑な思いを抱いたという。

先月16日、『わたし、定時で帰ります。』(TBS火曜よる10時)のドラマの第1回が放送されました。「働き方改革」に注目が集まっていることもあって、ネットでは大きな反響があったそうです。

中でも、Twitterのトレンドに「三谷さん」というワードが上がっていることに私は驚きました。

第1回で、定時で帰ることをモットーにしている主人公・東山結衣(吉高由里子)が対することになる三谷佳奈子(シシド・カフカ)は、絶対に休まないことを信条とし、同じ働き方を新人にも強いてしまう会社員です。彼女がそのような働き方をすることになった背景には、彼女が就職氷河期世代であることが影響しています。

仕事は無理をしてもやるものだ

私たち、みんなそう言われて育ってきたんです

そんな言葉を新人に投げかけてしまう三谷。シシド・カフカさんの迫真の演技のおかげもあって、放送後、Twitter上では様々な世代の方々が感想を寄せてくださっていました。20代の視聴者の感想は「三谷さん、怖い」というものが多かったように思います。

一方、原作者である私のもとには、30代の氷河期世代の友人たちから「三谷に激しく共感した」「彼女を悪者にしないでくれてありがとう」というメッセージがいくつも届きました。

実は私も、自分が生み出した人物でありながら、原作より人間らしく描かれた三谷の台詞に完全にシンクロしてしまい、試写会で初めて観た後は、しばらく動けませんでした。同じく氷河期世代の編集者さんも「途中から私が喋っているのかと思った」と言っていました。

そして、ドラマが放送される日の朝に、私が現代ビジネスに寄稿した、会社員時代を語るエッセイ「『わたし、定時で帰ります。』はゆとり世代のある問いから生まれた」は、夜までにサイト内でアクセスが1位になり、ヤフーニュースでのコメント数も800を超えたとのこと。まだ全てに目を通せてはいないのですが、多くの方が自身の体験を語ってくださっていました。

「これほど多くの人たちが思いを溜めこんでいたのか」とエッセイを依頼くださった編集さんも驚き、「これは大きな社会問題だ」と実感したそうです。

 

他の世代に理解されないルサンチマン

正直なところ、氷河期時代を語るのは辛かったです。当時の本音を素直に書いたのも初めてでした。後になって、ふいに涙がこみあげてきたり、恩義がある人たちの働き方を否定した自分に嫌悪が湧いたりしました。

何より、ネガティブな感情を吐き出してしまったことを後悔しました。就職した会社、取引先、出版業界に入ってもなお、上の世代の人たちに揶揄されてきたからです。

「なぜネガティブなことを言うのか」「あなたの作品にはルサンチマンがある」――私はただ普通に喋ったり、書いたりしているだけだったので、「なぜ自分は楽観的に生きられないのだろう」とずいぶん悩みました。

今から思えば、「ぜひ我が社へ」と社会に迎え入れられた若者と、「超ハイスペックな人材でなければ要らない」と拒絶され続けた若者では、見える世界が違って当然です。自己肯定感が低くなり、世界の全てが敵に見えてしまうのも、ある程度、仕方のないことだったと思います。