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「東京福祉大学」と「消えた留学生」の深き闇

「移民クライシス」の現場から
出井 康博 プロフィール

「日本語学校バブル」

“偽装留学生”が大量に流入した結果、日本語学校業界はバブルに湧いている。その数は全国で約750校を数え、過去10年間で約2倍に膨らんだ。

日本への留学を希望する外国人にとって、日本語学校入学のハードルは極めて低い。専門学校や大学に留学しようとすれば、日本語能力試験「N2」合格が条件となる。「N2」は同試験で最高レベルの「N1」に次ぐ難関だが、この条件をクリアしていなければ留学ビザは発給されない。

しかし、日本語学校に限っては、最低レベルの「N5」合格もしくは「150時間以上」の日本語学習を証明すれば入学できる。しかも学習証明書は簡単にでっち上げられる。経済力に加え、日本語能力も問われず留学できてしまうわけだ。

留学ビザの申請は、現地の斡旋ブローカーから届く書類を日本語学校が入管当局へと提出する。書類には現地の賃金水準からしてあり得ない収入等が記されているのだから、日本語学校が見破ろうとすれば簡単にできる。

しかし、精査すれば留学生は増えず、日本語学校が儲からない。そのため書類のでっち上げを黙認し、ビザ申請の手続きを進める。こうして政府、日本語学校ぐるみで“偽装留学生”が受け入れられている。

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実効性の乏しい法規制

“偽装留学生”を都合よく利用しているのは、日本語学校に限った話でもない。留学生のアルバイト先となる企業もそうである。

留学生のアルバイトは、法律で「週28時間以内」までしか認められない。だが、法律を守っていれば、母国で背負った借金の返済は進まない。しかも“偽装留学生”は、翌年分の学費も貯める必要がある。だから彼らは「週28時間以内」の法定上限を超えて働くことになる。

アルバイト先の企業も警察当局の取り締まりを恐れ、留学生を雇う際には法定上限の遵守に努める。だが、アルバイトをかけ持ちすれば、「週28時間以内」を超えて働くことは難しくない。

タン君もいろいろなアルバイトを経験した。最初の職場となったのが、コンビニで売られる弁当の工場だ。仕事は深夜から早朝にかけての夜勤で、同僚の大半はベトナム人など留学生だった。「弁当工場」での夜勤バイトは、“偽装留学生”の多くが一度は日本で経験する「登竜門」である。

続いて宅配便の仕分け現場でも働いた。宅配便の仕分けも、留学生の労働力なしには成り立たない職種の1つだ。伝票の番号を見て荷物を仕分ける仕事なので、日本語が読めなくてもこなせる。仕事はやはり夜勤で、職場にはほとんど日本人はいなかった。

他にも、うどんや牛丼のチェーン店で仕事に就いた。面接時には、他にもアルバイトをやっていることは必ず正直に告げた。しかし、面接で問題になることは一度もなかった。

人手不足でルールはなし崩し

タン君のような“偽装留学生”を採用するのは、人手不足が深刻な職場ばかりだ。日本語ができない留学生であろうと、とにかく人手を確保したい。アルバイトのかけ持ちによる違法就労が発覚しても、罪に問われるのは留学生だけだ。企業にとっては、実に都合の良いシステムである。

 

タン君が経験したアルバイトで唯一、日中にあったのがうどんチェーン店での仕事だった。週末を含めほとんど毎日、午前中に働いた。夜勤のアルバイトがあるときは、勤務先からそのまま店に駆けつけた。そして午後からは日本語学校の授業に出る。週の半分は、ほとんど睡眠時間のない生活である。

初めてできた日本人の友だちは、うどん店の店長だった。“偽装留学生”たちは日本人と接する機会がほとんどない。日本語学校のクラスメイトは留学生ばかりで、アルバイト先でも日本人と同僚になることは少ない。「友だち」と呼べる日本人のできたタン君は幸運だった。