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「東京福祉大学」と「消えた留学生」の深き闇

「移民クライシス」の現場から
出井 康博 プロフィール

斡旋ブローカーとでっち上げの書類

ただし、その実態は驚くほど杜撰なものだ。

新興国の留学希望者には、ビザ申請時に親の年収や預金残高など、経済力を証明する書類の提出が求められる。ビザ取得に必要な額は明らかになっていないが、年収や預金残高が最低でもそれぞれ200万円程度は必要だ。新興国では、かなりの富裕層でなければクリアは難しい。そこに留学斡旋ブローカーの介在する余地が生まれる。

ブローカーは銀行や行政機関の担当者に賄賂を渡し、ビザ取得に十分な金額の記された書類をつくってもらう。銀行などが正式に発行した書類なので「偽造」ではない。数字はでっち上げでも「本物」だ。ベトナムのような新興国では賄賂さえ払えば、銀行や行政機関であろうと内容は簡単にでっち上げてくれる。

そんなカラクリは、留学ビザを発給する日本側の法務省入国管理当局(今年4月から「出入国在留管理庁」)や在外公館も十分にわかっている。しかし、「本物だから問題ない」というスタンスでビザを発給する。責任を相手国に押しつけているのだ。

留学ビザの申請には、他にも履歴書や高校の成績、「150時間以上」の日本語学習証明書などが必要となる。そんな書類もまた捏造できる。

タン君の場合も、履歴書や学習証明書をブローカーがでっち上げた。彼は兵役に就いた過去があるが、その経歴は履歴書には載っておらず、電気関係の専門学校で学んでいたことになっている。「兵役」がビザ取得の足かせになると、ブローカーが判断して改竄した。

つまり、“偽装留学生”が提出する書類は、親の年収や預金残高に限らず、すべてでっち上げられるのだ。履歴書まで捏造が可能なのだから、過去に犯罪を犯したような者まで紛れ込んでいないとも限らない。それが今、「留学生30万人計画」のもとで起きている現実なのである。

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仕事が見つからないので日本を目指す実態

留学生の急増に伴い、「質」は明らかに低下している。ベトナムで「留学ブーム」が起き始めた2010年代前半は、ハノイやホーチミンといった都市部の出身者が留学生の中心を占めた。現地の一流大学を卒業したような若者の間でも、日本行きの希望者は多かった。

 

それが現在、留学ブームは地方へと移り、学歴や仕事のない若者が日本を目指すようになった。都会では、日本ほど賃金は得られなくても仕事はある。多額の借金を背負い、わざわざ日本へ出稼ぎに行こうという若者は少ない。

タン君にしろ、ベトナム北部の田舎の出身だ。ベトナムで兵役に就く若者には、学業が苦手だったり、貧しい家の子どもが多い。そして除隊後の失業も問題となっている。タン君も仕事が見つからず、日本へと「留学」することになった。