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# 労働者 # 留学生 # 実習生

「東京福祉大学」と「消えた留学生」の深き闇

「移民クライシス」の現場から

日本を去ったベトナム人青年の独白

2019年4月、1人のベトナム人留学生が日本から去っていった。東京都内の日本語学校を3月に卒業したばかりのタン君(25歳)だ。

タン君は4月、「東京福祉大学」に入学するはずだった。同大は先日、大勢の留学生が所在不明になっていることが発覚し、「消えた留学生」問題としてメディアや国会で取り上げられた。その東京福祉大学へ進学せず、彼はベトナムに帰国する道を選んだ。

タン君とは、彼が2017年7月に来日した直後に取材で知り合って以降、定期的に会っていた。その彼から、日本を離れたことを知らせるメッセージがフェイスブックに届いたのは4月半ばのことだ。

<何も言わないでベトナムに帰ってしまいごめんなさい>

そのひとことに、タン君の無念さが滲み出ていた。2年近くに及んだ日本での生活で、日本語学校やアルバイト先で都合よく利用され続けた。彼の留学体験は、「消えた留学生」問題の背後に存在する深い闇を象徴している。

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“偽装留学生”を生んだ「国策」

外国人留学生の数は2018年末時点で33万7000人に達し、12年からの6年間で16万人近くも増加した。留学生の国籍ではベトナムの急増が際立ち、過去6年で9倍以上の8万1009人にまで膨らんだ。他にもネパールが約5倍増の2万8987人となるなど、アジア新興国では日本への「留学ブーム」が起きている。

こうした新興国出身の留学生は、多くが「勉強」よりも「出稼ぎ」を目的に来日する。留学費用を借金に頼ってのことだ。その額は、日本語学校の初年度の学費や寮費、留学斡旋ブローカーへの手数料などで150万円前後に上る。新興国の人々には莫大な金額だが、日本で働けば簡単に稼げると考える。

 

タン君も、出稼ぎ目的の“偽装留学生”の1人だ。首都ハノイから車で4〜5時間離れたタインホア省の小さな村の出身で、実家は農家を営んでいる。収入は豊作の年でも1年で30万円程度に過ぎず、タン君の留学費用を準備できる余裕はない。費用はハノイで働く姉が銀行から借り入れた。

日本政府は本来、留学費用を借金に頼るような外国人に対し、「留学ビザ」を発給していない。同ビザは日本でアルバイトなしで留学生活を送れる外国人に限って発給される建て前なのだ。

しかし、この原則を守っていれば留学生は増えず、安倍晋三政権が「成長戦略」に掲げる「留学生30万人計画」も達成されない。そのためルールを捻じ曲げ、経済力のない外国人にまでもビザを発給し続けている。結果、「30万人計画」も2020年の目標を前に達成された。