人口減少が自衛隊に及ぼす影響に、日本人は気づいていますか?

これこそ、この国にとっての有事だ
ロバート・D・エルドリッヂ プロフィール

災害から日米安保協力を考え直す

ここで、現在は均等配置に安全保障上の意味がない、と述べたが、実は他に自衛隊の任務で意味がある分野が1つだけある。災害派遣である。日本は常に全国で重大な自然災害に備えなければならない国で、しかも、その際、もっとも信頼が置ける組織が自衛隊である。

出動から4時間以内でどの場所にも、というのは心強い限りである。しかし、先に説明したように、これからさらに組織維持すら危惧される状況の中で、災害派遣のためだけに、安全保障が本来任務である陸上自衛隊を、全国均等配備する余裕があるのだろうか(しかも、被災地に近ければ近いほど、自衛隊の施設が自ら被害を受けている場合もあるので、対応能力に支障がでる可能性がある)。

 

このことに思い至ったのは、先日、香川県の善通寺駐屯地を訪れた時のことだった。善通寺駐屯地は、四国4県を担当する第14旅団の司令部所在地である。第14旅団は近年、機動旅団化され、有事、もしくは災害発生時には、他地域へ支援に向かう部隊として位置づけられている。基幹となる普通科連隊は、善通寺、松山、高知に駐屯している。

本州へは本四架橋を使って迅速に移動できる。しかし、重大災害時、瀬戸内海側から太平洋側の高知県に向かうには、四国山地が険阻であることから、特に道路遮断などがあった場合、容易に移動できなくなる。いうまでもなく、四国の太平洋岸は南海地震の危険が指摘されている地域である。かといって、今以上に高知県に部隊を集中配備することは不可能であろう。

日本では、南海地震だけではなく、東南海地震、東海地震などの巨大災害の可能性が常に指摘されてきている。日本列島が横に長く、山がちであることから、ここで指摘したような困難は各所で起きうる。

このような地域に、災害時に救援部隊や物資を即時に大量に送り込むには、海からアプローチするしかない。しかも港湾設備なども使用不能になっている可能性が高いので、ホバークラフトやヘリコプターなどを常備している大組織、はっきり言えば水陸両用作戦用の軍隊でなければ役に立たない。

このことは私が実際に立案し実施に携わった、東日本大震災での米軍の「トモダチ作戦」を見ればわかりやすい。このときは、米海兵隊と海軍が、文字通り上陸作戦さながらのやり方で、被災地に極めて迅速に支援に入った。

ここでもう1つの提案である。重大災害時の救援活動を測定した計画を立てるとき、自衛隊だけではなく、米海兵隊も最初から組み込んで、地域、役割の分担を行ってはどうだろうか(詳細については、拙著『次の大震災に備えるために』近代消防社、2016年、参照)。

もちろん海兵隊は、東日本大震災や海外災害などの時に、早急に支援に入った実績がある。これを巨大災害時の災害派遣計画に最初から組み込むべきである。

元より、日本の有事の際の防衛計画では、米軍がどのように支援に入るか、様々なケースで事前準備がなされ、演習が繰り返されている。これを災害派遣にも拡大するのである。それにより、自衛隊は平時の全国均等カバーという非効率から解放されるのである。

さらに理想をいえば、私は、この災害派遣の国際協力を東アジアの地域ネットワークに拡大できればと思っている。本当は地域共同安全保障が理想だが、これはご存じ通り、政治的な制約で今すぐというわけにはいかない。

しかし、災害時協力であれば、政治的制約はより緩やかなものとなろう。そうなれば、日本の地域貢献度はさらに高まり、日本自体もより効率よく自衛隊を維持することが出来るのである。

人口減少によって自衛隊の置かれている状況はまずます厳しくなる。しかし、その気になれば出来ること、もっとやらなければならないことは実は多く存在すると言っていい。その対策にどれだけ真剣に日本が取り組むか、海外が注視しているのはそのことなのである。

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