人口減少が自衛隊に及ぼす影響に、日本人は気づいていますか?

これこそ、この国にとっての有事だ
ロバート・D・エルドリッヂ プロフィール

自衛隊が置かれた状況

このような人口減少に伴う弊害は、日本の政治、経済、社会の至るところで顕在化しつつあり、各分野において後手に回りつつも、何とか対策を立てようと努力がなされている。

しかし人口減少問題と密接に結びついていながら、ほとんど対策が立てられていない分野がある。それが「国防」だ。多くの日本人は意識していない事柄ではあるが、そう遠くない将来において甚大な影響を与えると確信している。

もともと自衛隊は憲法9条との兼ね合いなど、創設以来、特殊な立場に置かれ続けてきた。いまだに容易に解決できない意見対立があり、そのことが日本での安全保障問題への思考停止を生み出している。

しかし、内閣府が3年ごとに行っている世論調査によると、自衛隊は国民の強い支持を得ていることが分かっている。直近の2018年の調査では、自衛隊に対する印象で、89.7%が「よい印象を持っている」「どちらかというとよい印象を持っている」と回答。また安全保障の方法としては、「現状とおり日米の安全保障体制と自衛隊で日本の安全を守る」が81.9%。現体制の自衛隊は国民の絶対的な支持を得ていると言っていい。

にもかかわらず、自衛隊は発足以来、65年の間、ほとんどの時期で必要な兵力を維持できていなかった。大半の部隊が募集定数を充たすことがなかったのである。

その要因は1つではない。

まず大きいのが防衛費の抑制。特に1976年の三木内閣当時にGNP(国民総生産)1%以内という閣議決定が行われたことが、その象徴。自衛官の給与も低く抑えられることになった。経済大国化が進む中、民間との格差は開くばかりであった。

そして何より、自衛隊に批判的な社会勢力がネガティブキャンペーンを続けたことが影響している。特に高等学校、大学などで隊員募集に係わる一切に対し、圧力が加わり続けてきた。筆者からすれば、募集活動への妨害や先日沖縄県宮古島で起きた自衛官やその家族への悪戯などのような行動は、憲法違反そのものだ。

たとえ低賃金であっても、多くの国民から尊敬される存在であれば、人は集まるはずだ。しかし、特に教育現場で徹底して否定されつづければ、優秀な人材が集まると考える方が不思議なくらいだ。

もう1つの要因は、皮肉なものである。大規模災害における自衛隊の活動は、多くの国民に感謝の念を抱かせ、支援、関心が高まった。世論調査にも明快に表れているが、入隊動機を上げるインセンティブまで結びついていない。むしろ逆効果になっているという情報もあるくらいだ。危険であり、あるいは、人道支援や災害派遣は、憧れていた国防そのものと違うので、辞退してしまうというのだ。

 

このようなハンディキャップを抱えながら、さらに人口減少の影響を受けているのである。18~26歳の入隊資格をもつ国民数は、1994年の1700万人をピークに減少を続け、2017年には1000万人を割り込んでしまった。そこで、自衛隊は採用年齢の上限を32歳に引き上げざるを得なかったのである。

でも日本はまだ幸せなほうだ。一国平和主義で、70年余りで1度も戦争や紛争に巻き込まれたことがない。そのため、兵力の「維持」が議論のポイントであって、戦争によって負傷者が出た場合の補充の議論はしなくて済んだ。

安全保障の分野でより責任のある貢献をするなら、自衛官が死ぬ覚悟を、自衛隊のみならず、政府、国民は持たないといけない。そのため、単なる兵力の「維持」を上回る「補充」する数字を確保しなければならない。

一方で、冷戦終了後、世界において日本の防衛的役割は重要性を増している。

日本の隣国、中国、ロシア、北朝鮮と行った国々は、この数十年で軍事費を何倍にもしており、国際社会の警戒感は相当に強いものになっている。

そのため、日本は過去10年間で、アメリカに加え、オーストラリア、イギリス、フランス、カナダ、インド、フィリピンなどとの防衛協力を強化した。

隣国による脅威はこれから長期にわたり強まることが確実なので、その分、自衛隊が世界から求められる任務、負担も増えることになる。

また、これまでの25年間で、国連平和維持活動(PKO)や他国での災害救助、SLOC(シーレーン)保護目的などで、世界各地に自衛隊を派遣している。この貢献が今後、減ずることは日本の国際的地位を見ると考えられない。

また、2019年に策定された「防衛大綱」ではサイバー空間、宇宙空間、電磁波などの領域で新たな優位を保つことを、「死活的に重要」としている。つまり新分野でも防衛力整備を行う必要がある。

このような役割が拡大し続けているなかで、もし人口減によって、結果的に自衛隊の活動を縮小することがあれば、それは日本国内のみならず、世界中に大きな影響をもたらすことになる。

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