鳩山総理と小沢幹事長の間を
緊張させる官僚の「罠」

普天間問題を契機に静かなクーデターが始まる
佐藤 優 プロフィール

 もっとも、官僚の集合的無意識によって、都合の悪いことは意識されないので、官僚に嘘をついているという自覚はないのが通例だ。官僚には常にサボタージュや断片的情報の提供によって、総理や大臣の判断を官僚寄りにしようとする認識を導く関心が働いている。

政権を潰すという賭けに出た官僚

 小沢幹事長は、このような官僚の熱心さ、忠実さによって、官僚に引き寄せられることはない。それは、現実に検察官僚と生きるか死ぬかの戦いを展開しているからだ。

 官僚は、現在、2つの戦線を開いている。第1戦線は、検察庁による小沢一郎潰しだ。第2戦線が外務官僚と防衛官僚による普天間問題の強行着陸だ。5月に入って外務官僚は、「アメリカの圧力」を巧みに演出しつつ、自民党政権時代に官僚が定めた辺野古案が最良であることを鳩山総理が認めないならば、政権を潰すという勝負を賭けた。

 鳩山総理は、現状の力のバランスでは、官僚勢力に譲歩するしかないと判断し、レトリックはともかく、辺野古案に回帰した。前に述べたように、鳩山総理の認識では、これは暫定的回答で、段階的に沖縄の負担を軽減し、将来的な沖縄県外もしくは日本国外への模索を実現しようとしているのであろう。

 しかし、この状況を官僚は「国家の主導権を官僚に取り戻した象徴的事案」と受けとめている。

 小沢幹事長は、この象徴的意味を十分に理解している。普天間を突破口に、官僚による静かなクーデターが始まった。このままだと民主党連立政権が政治生命を喪失し、主導権を官僚に握られる危険がある。

 鳩山総理にとっては、戦術的妥協に過ぎない今回の普天間問題の処理を、小沢幹事長は戦略的瑕疵で、このままでは権力が官僚に奪取されると危機感を強めている。

 このような現状認識の相違が鳩山総理と小沢幹事長の間をかつてなく緊張させているのだと筆者は見ている。「友愛」のベクトルを再び国民に向けることで、態勢を立て直すことを小沢幹事長は考えているのだと筆者は見ている。

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著者:佐藤優
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