鳩山総理と小沢幹事長の間を
緊張させる官僚の「罠」

普天間問題を契機に静かなクーデターが始まる
佐藤 優 プロフィール

 この下地氏という政治家の辞書にはインテルリティー(首尾一貫性)という言葉がないようだ。3月1日午後の衆議院予算委員会で下地氏はこう言った。衆議院公式議事録から下地氏の発言を正確に引用しておく。

< そして、いろいろなことがあるかもしれませんけれども、まずは段階的に沖縄の基地問題を解決していくことが大事。だから、私は、とにかくこの普天間の問題を解決することが大事だと思っている。

 私は、総理が五月三十日までにこの問題について判断をせずにまた先延ばしにしてやるというようなことがあれば、沖縄選出の国会議員として、六月の一日には衆議院をやめますよ、私は。 >

 6月1日現在、下地氏は衆議院議員を辞職していない。5月28日の日米合意と閣議了解で問題が解決したと下地氏が認識しているからであろうか? 5月末までに普天間問題が解決しない場合、鳩山総理が辞任するのではなく、下地氏が議員辞職するのではなかったのだろうか? 

「沖縄選出の国会議員として、六月の一日には衆議院をやめますよ、私は」と述べたのは、単なる言葉のアヤで真剣な発言ではなかったということか? 下地氏には、国民、第一義的に沖縄1区の有権者と、匕首を突きつけた相手である鳩山総理に釈明する義務がある。

 2月の下地発言後、鳩山総理の心の中で、沖縄にも県内移設を容認する可能性があるという認識が強まった。

 普天間問題について、小沢幹事長は、沖縄県内への移設の可能性は、非現実的と考えている。それは地元の抵抗が激しいからだ。そして、普天間問題を官僚並びに無意識のうちに官僚と同じ目線になっているマスメディアが政局の焦点にしようとすることに対して、小沢幹事長は危機意識を感じていた。

 筆者が得ている情報では、日米合意、閣議了解の内容について、小沢幹事長は事前に総理官邸、外務省、防衛省から何の説明も受けていない。鳩山総理もこの問題について、小沢幹事長の助言を求めていない。

 小沢幹事長からすると、鳩山総理は、沖縄県民に対して向けるべき「友愛」を、官僚に対して向けてしまったのである。官僚は個人的には、決して悪人ではない。

 仕事熱心であるし、官僚の立場から鳩山総理に誠実に仕えている(総理から評価されれば出世するという動機があるが、それについては考慮の外に置く)。積極的な嘘をついているようには見えない。