鳩山総理と小沢幹事長の間を
緊張させる官僚の「罠」

普天間問題を契機に静かなクーデターが始まる
佐藤 優 プロフィール

 1月末の名護市長選挙で、辺野古への受け入れに反対する稲嶺進氏が当選した。これで鳩山総理は、沖縄県外に向けて、舵を切ろうとした。ここで大きな与件の変化が生じた。

 沖縄1区選出の下地幹郎衆議院議員(国民新党)が、沖縄県内への受入を主張したからだ。この機会を外務官僚、防衛官僚は最大限に活用した。官僚は、下地氏が沖縄の「声なき声」を代表しているという印象操作と情報操作を行い、官邸の官僚、閣僚たちに「辺野古への回帰以外にない」という雰囲気を醸成していった。

 鳩山総理は、意思決定理論(決断理論)の専門家だ。目的関数を設定し、制約条件を定める。制約条件の中で、下地氏の沖縄県内受け入れ発言により、「沖縄の民意の反対」という要因が小さくなり、官僚による抵抗、また官僚が誘致する米国の圧力という要素が日に日に強くなった。

議員辞職すると宣言したはずの下地氏

 下地氏は、鳩山総理を標的にし、沖縄県内への移設を5月末までに実現するように、執拗な圧力をかけた。5月16日には、鳩山総理の辞任を求める爆弾発言をした。連立与党の幹部が鳩山政権を崩壊させようとするのだから、異例な話だ。下地氏の地元の琉球新報はこう報じる。

< 5月末決着で党内見解"真逆"/日米合意なければ「首相は辞任を」/下地国対委員長
【東京】国民新党の下地幹郎国対委員長は16日のテレビ朝日番組で、米軍普天間飛行場の移設問題の5月末の決着を目指していた鳩山由紀夫首相の責任に関して、

「首相が5月末までにやるべきことは日米合意だ。5月末までにできなかったら首相としての責任を取らなければいけない」

 と述べ、月内に日米合意ができなければ首相は辞任すべきだとの考えを示した。

 下地氏は「日米でこういうふうな方向で行くということをまず決め、決まったパッケージを沖縄に説明する」と述べ、5月中に移設先となる沖縄などの地元自治体と米国、与党3党の合意を得るのは困難だとして、米の合意取り付けを優先すべきとした。 >

(5月17日琉球新報)

 下地氏が所属する国民新党の亀井静香代表は、5月末までに普天間問題が解決しなくても、鳩山総理が辞任する必要はないという見解を述べた。だから琉球新報は、「5月末決着で党内見解"真逆"」という皮肉をこめた見出しをつけたのであろう。

 総理の進退という重要事項について、党代表と国対委員長が「真逆」の見解を表明する国民新党は、近代的政党の名に値しない選挙に当選するための互助組織だと批判されても仕方ない。