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日本航空中国総代表が明かす「中国航空市場に明確な商機アリ」

「観光地・日本はいま穴場なんです」

「商機は広がっている」

「中国経済は米中貿易戦争の激化で減速している」「中国は人件費の高騰もあって『世界の工場』というステイタスも失いつつある」と日本で盛んに報じられる中で、日本航空がその情報に真っ向から逆らう「中国シフト」を強めている。

その背景にあるのが、立ち上がり始めた「巨大消費市場」をターゲットに据えた、フルサービス航空会社ならではの高価格戦略だ。

筆者は15年ぶりの上海取材の機会に、いくつかの独自取材のほかに、日本航空の上海支店を訪ねて、同社の米澤章・執行役員兼中国総代表のインタビュー取材を敢行した。

それらの取材から、多くの日本の製造業が撤退を急ぐ現状を尻目に、中国市場には個人消費の掘り起こしを狙う企業にとって逃すことのできない大きな商機が広がっていることが確認できた。

今週は、上海国際モーターショー、中国最大のLCCが賭ける対日戦略に続く、筆者の上海現地取材レポートの第3弾をお届けしよう。

 

まず、一般的な日本企業の中国に対する対応を数字で押さえておこう。

筆者が入手したのは、北京と上海にある日本商工会議所の会員企業数である。北京がピーク(2012年)の789社に対し、現在が649社と2割近く減った。上海もピーク(2014年)の2432社に対し、現在が2374社とわずかだが減少していることに違いはない。

この数字は、日本でよく報じられているように、製造業を中心に、日本勢が撤退を急いでいることの傍証と考えてよいだろう。トランプ米政権と習近平中国が報復関税合戦を繰り返す貿易戦争は両国経済のみならず、世界経済の足を引っ張っている。リーマンショック以来積み上がった金融セクターの不良債権処理が滞りがちなのも事実だろう。

加えて、尖閣列島の国有化を機に大きく揺れた日中関係を見れば、関係修復が始まったとはいえ、日本の製造業が中国現地生産から撤退を急ぐのも無理からぬことかもしれない。

そのことは、4月20日付の拙稿でお伝えしたように、トヨタ自動車やホンダが前回(2017年)の上海モーターショーでEV(電気自動車)の投入で独フォルクスワーゲンの後塵を拝したことからも伺える傾向だ。

しかも航空業の場合、先週お届けした春秋グループのように中国最大の旅行代理店「上海春秋国際旅行社」の絶大な集客力をテコに訪日団体客を囲い込むLCC(格安航空会社)春秋航空のような、手ごわいライバルの存在も見逃せない。

取り巻く環境の厳しさに押されて、日本航空は中国戦略で苦戦しているのではないか――そんな仮説を胸に、筆者は4月16日、日本航空の上海支店に同社の米澤中国総代表を訪ねた。米澤氏は、2008年から上海支店長を3年余り経験。昨年5月に中国総代表として中国に戻り、北京に本拠地を置いて中国各地を飛び回っている人物だ。

挨拶もそこそこに、さぞかし苦戦しているんだろうなと投げかけた質問に対して、戻って来た答えはまったく予想外のものだった。

「悪影響はまったくありません」

―― ズバリ伺います。日本の製造業の相次ぐ撤退による悪影響は出ていますか。まずは現在の状況を聞かせてください。何か数字の裏付けはありますか。

米澤章:インタビューの前、先ほどの挨拶の際に、町田さんは「今回が15年ぶりの上海訪問で、まったく印象が変わった。中国人が豊かになり、消費意欲が旺盛だ」と話していましたね。実は、その印象の通りなんです。中国は物凄く変化の早い市場なので、対応して中身をどんどん変えていく必要はあります。が、今のところ、当社の業績に悪い影響がまったくありません。

まず、日本の製造業の撤退ですが、これは文字通りの撤退ばかりではなくて、現地化の進展の結果というケースが案外多いのです。その場合は、出張ベースでの日本との往来が密になるケースが多いため、それほど日本航空便の搭乗者減少に繋がらないのです。

米澤氏

むしろ、注目してほしいのは、これまで当社便の主要な顧客だった日本人ビジネス客の伸びはそれほど高くないものの、圧倒的な勢いで、中国人富裕層の観光客が増えていることなんです。

当社として公表できる数字で言うと、2015年度を100とした場合の「旅客数」は、2018年度に北京便が129、上海便が119と拡大を続けています。当社は運賃をLCC各社はもちろん、中国国営のフルサービス3社と比べても高めに設定しています。が、それでも当社の高くても良質なサービスを評価してくれる富裕層の観光客が増えているのです。