20代で渡仏し、20年住んだのちに家族で帰国、現在は日本在住のエッセイスト、吉村葉子さん。2007年に刊行し、文庫だけで37万部を超えたベストセラー『お金がなくても平気なフランス人、お金があっても不安な日本人』からオンラインで初めて記事を紹介する第5回。

フランスの店員のサービスは日本と比べたらとてつもなく悪いという。「お客さまは神様」ではまったくないので、レストランに行ってもひたすら待たされたり水ももらえなかったり、なんてことは序の口なのだ。

そんな不愛想なフランス人の店員が、客に寛容なことがあるという。その理由は。

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「おやつは自家製」といっても

美味しいモノに目がないパリっ子。ところが、一級のグルメで知られていようと、食べ物を買うときにも彼らはそろばん勘定をおこたらない。フォアグラ、キャビア、トリュフなど高くて美味しいモノは山ほどあるけれど、お金をかけなくても抜群に美味しいモノがある。

下校時間の4時半になった。ママやベビーシッターたちが、幼稚園や小学校に子供をむかえにいく時間である。おなかを空かして学校の門から出てくる子供のために、彼女たちはおやつ持参でむかえにいく。ブランジュリーで買ったパン・オ・ショコラもたまにはいいけれど、ママたちはひと工夫。ほっぺたが落ちそうなほど美味しくて、お金のかからないア・ラ・メゾン(自家製)のバゲット・オ・ショコラを用意する。

昼食に残ったバゲットと、買いおきのシンプルな板チョコがあればいい。子供一人分で10センチほどのバゲットに、たてに切り込みを入れる。サンドイッチを作るときの要領で、そこにポンと割った板チョコを挟んでできあがり。これなら、子供の手がチョコレートで汚れることも、バターでギトギトにもならないし、さっぱりしていてとても美味しい。

なによりも、ブランジュリーで売られているパン・オ・ショコラにくらべたら、だんぜん安い。パン・オ・ショコラ1つならまだしも、子供を2人以上連れているママがほとんどだから、2倍になると1回のおやつ代には高すぎる。

「本来の値段」に敏感

フランス人は、モノの値段にとても敏感な人たちだ。値段への関心は、高価なモノに対してとは限らない。私たちはともすると、安いモノの値段には寛大になってしまいがちだが、彼らはちがう。金額の多寡に関係なく、本来あるべきモノの値段にシビアなのである。

パンに相当するほど、ジャガイモはフランス人の食卓に欠かせない。野菜の中でもっとも安いジャガイモ一キロの値段についても検討する。

郊外の高速道路にあるガソリンスタンドの目立つ場所におかれている、10キロか20キロのナイロンの網袋に入ったジャガイモの値段に注目する。産地直送で新鮮なことはいうまでもないが、ガソリンスタンドで売られているそれは、キロ当たりの値段がパリ市内のマルシェの半額にちかい。パリのマルシェでキロ100円で売られているジャガイモが、20キロ袋入りで1000円。週末を別荘で過ごしたパリっ子たちは、パリの自宅に戻る途中のガソリンスタンドで、大袋に入ったジャガイモを買う。

ジャガイモ1キロ、バゲット1本の値段を日本のそれとくらべると、フランスは驚くほど安い。ほかにも野菜や果物、牛肉が安い。鶏肉と豚肉については、不思議なことにわが国のほうが安いから、いくつかの例外はあるけれども、生鮮食料品はフランスはわが国とくらべて圧倒的に安い。パンについては、バゲットだけが破格の安さになっている。バゲットは昔から、フランス人の大切な主食だ。使われている小麦粉の量も250グラムと決められていて、現在は一本が150円前後だろうか。どんなに貧しい人たちでも買えるような価格設定になっているのである。

フランス人の「主食」バゲット。もちろん高級なブランジェリーもあるけれど、バゲットだけは安値で提供しているお店が多い Photo by iStock