いまさらロシアにすり寄る北朝鮮の「露骨外交」の真骨頂

ロシアはキャスティングボードを握るか
大原 浩 プロフィール

もともとソ連・ロシアの影響下

現在では、中国の子分だと思われている北朝鮮だが、金王朝初代の金日成は、もともとソ連の後押しで北朝鮮の指導者になることができた。建国当初はソ連の傀儡政権としてスタートしたと言ってよい。

北朝鮮は1980年代初頭に、次期国家主導者の予定である金正日氏が「1942年2月16日に、金日成氏が抗日武装闘争を続けた(あくまで北朝鮮側の主張)、中朝国境にまたがる聖地白頭山のキャンプで誕生した」と公式発表した。

しかし、乳母や肉親等の証言を分析すると、金正日氏が1941年にソ連極東で生まれたことは、ほぼ間違いない。建国の父と呼ばれる金日成主席は、終戦までは日本の統治下からソ連に逃れており、その後、ソ連の軍事力をかさに着て北朝鮮に舞い戻ったと考えられる。

ところが、1950年の朝鮮戦争の際に、米国との全面対決=核戦争を恐れたソ連が朝鮮戦争への介入を手控えたのに対して、建国間もない共産主義中国が多くの犠牲を払って義勇軍を送り込み、勇敢に戦ったため、北朝鮮とソ連の関係が変化し始める。

その後、ソ連の力が衰え中国が台頭する中で決定的だったのは、1989年のベルリンの壁崩壊と、それに続く91年のソ連の崩壊である。

この時期以降、崩壊したソ連の主要部分を引き継いだロシアは、北朝鮮を助ける余裕が無く「餌をくれない飼い主」を見限った金王朝が、共産主義中国にすり寄ったのである。

また、1917年の革命以来共産主義のリーダーを自認してきたソ連は、北朝鮮の建国を助けただけでは無く、建国間もない共産主義中国にも兄貴分として多大な援助を行った。

ところが、中国は国力をつけると、ソ連とは路線が衝突するようになり、疎遠となる。そして、ソ連崩壊後のロシアが低迷するのに対して、改革開放を成功させた中国はロシアを見下ろすような大国になった。

プーチン氏をはじめとするロシア政権幹部にとって、これが面白いはずがない。だから、米中貿易戦争が始まった時、彼らは薄ら笑いを浮かべたはずだ。

 

また、北朝鮮に関してもプーチン氏は「奪われた領土」の1つと考えているだろう。

しかも、北朝鮮はロシアにとって地政学的に重要だ。

例えば、1904年~05年にかけて戦われた日露戦争は、南下政策をとりつつあったロシアと日本の間における満州と朝鮮半島の権益における争いが原因だ。この戦争で勝利した日本は、講和条約で朝鮮半島の全面的な権益を得ている。

つまり、1917年の共産革命以前の帝政時代から、朝鮮半島はロシアにとって戦争も辞さない「喉から手が出るほど欲しい」地域なのである。

もちろん、自らも経済制裁で苦しんでいる現在のロシアの国力を考えれば、朝鮮半島に及ぼす影響力は限定的だが、ロシアの朝鮮半島に対する思いには「怨念」のようなものがあることにも注意したい。