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いまさらロシアにすり寄る北朝鮮の「露骨外交」の真骨頂

ロシアはキャスティングボードを握るか

傷のなめあい

4月25日、ロシア極東ウラジオストクで、北朝鮮の金正恩氏とプーチン大統領との首脳会談が行われた。

事前に予想された通り、これといった目新しい合意や声明は発表されなかった。

ロシアはウクライナ問題、北朝鮮は核開発問題で、米国をはじめとする先進国からの「経済制裁」がボディー・ブローのように効いてきている。両国が「もうこの辺で勘弁してもらえませんかね……」と米国や世界に懇願する場となっただけである。

もちろん、そんな都合の良い話を米国や先進各国が許すはずがない。トランプ大統領が言うところの「ビッグ・ディ―ル」で完全核放棄を実現しなければ、北朝鮮への経済制裁は延々と続くであろう。

北朝鮮は一方的に本年末を交渉の区切りにしようとしているが、これは金政権にとってのタイムリミットと言っても良い。

第2回米朝会談で、昼食会のテーブルを「ちゃぶ台返し」された金正恩氏は、国内の政権幹部から冷たいまなざしで見られているはずである。

アドルフ・ヒットラーの暗殺事件は、個人の単独あるいは組織的なものを含めて、42回以上企てられたとされるが、そのいずれもが失敗している。

北朝鮮はナチス・ドイツ以上の独裁・恐怖国家だから、そのような暗殺事件はあまり起こっていない(情報も統制されているので、その事実が伝わってこないだけかもしれないが……)が、3代目の若きボンボンが、大言壮語の果てにトランプ大統領に「お預け」をくらったことに対する幹部たちの「口に出さない怒り」は、金正恩氏も肌で感じているはずである。

国内で追い込まれている金正恩氏が、「威厳をとりもどすため」にロシアとの会談を企画したと考えるのが自然であろう。何しろ父親の時代の訪問から8年、金正恩氏が独裁者の地位を継いでからは初めての訪露である。

後述するように、これまで、建国の恩人であるロシア(旧ソ連)に不義理を続け、先方からの誘いにも首を縦に振らなかったのに、第2回米朝会談が大失敗した後すぐに助けを求めて訪露するというのは、かなり露骨だ。

 

中国にもお荷物になってきた…?

率直に言えば、現在の北朝鮮は、共産主義中国にとってかなりのお荷物だ。

もちろん、朝鮮戦争で義勇軍を送り込み、多数の中国人民の犠牲を出しながら守った国である。だから、中国にとって、「核心的利益」の1つであることは間違いない。この核心的利益をもし失うことになれば、習近平政権も危うい。

だからこそ、厄介なのだ。北朝鮮に国境を接する北部戦区(2016年に東北3省の瀋陽軍区と内モンゴル自治区、山東省などを統合)はロシアとも国境線を共有しているが、ここの人民解放軍は、基本的には「反習近平派」である。

習近平政権は現在「米中貿易戦争」、「米中冷戦」の真っただ中だ。そんな時期に、米国と核保有問題で敵対している北朝鮮の肩を持つことなど到底できない。実際、ハノイの米朝会談以降、共産主義中国は北朝鮮をサポートするような発言は行っていない。

その習政権の事情は、金正恩氏もよくわかっているはずだから、新たな御主人様(スポンサー)探しに、ウラジオストクを訪問したというのが真相だろう。習近平氏が金正恩氏の背中を押したのかもしれない。習近平氏は、厄介者払いができて内心ほくそ笑んでいるかもしれないが……。

その背景には、金正恩氏がプーチン氏のもとに駆け込んでも、口先の支援をするだけで何もしないであろうという読みがある。米国の攻撃の矢をロシアが引き受けてくれるのなら大助かりというわけだ。