大人になってからの「できた!」体験

やってみると、ひとり旅にはやっぱり発見がある、おもしろい。荷物は重いし、だれも助けてくれない。グーグル先生がいても道に迷う。ごはんを食べるところも限られる。移動ひとつでも考えなきゃなんない。いつも弛緩している回路をフル稼働させる。

でも、そのあたり、まるっとひっくるめて、「できた!」っていう、初めてのお使い的な、ちょっと晴れ晴れとした気分が味わえる。いい大人だけど。

いや、いい大人だからこそ、焦らずゆっくり旅を楽しめるようになっていた。知識や経験が増えているからか、若いころとは感じるところも変わり、深く思いを巡らせるように。逆に、自分は何も知らなかったなと、この年だからこその、はじめて知る喜びを得たりもする

いつかやってみたかったことも、存分にできる。とはいえ、大それたことじゃない。
パリの蚤の市でブロカント*4の皿やクロスをおなかいっぱい見た。言葉が完璧には通じないながらもいろいろ教えてもらい、小さな刺繍が何倍も愛おしくなった。オルセーで、あきるまで気になる絵の前にただ座っていた日もあった。

ニューヨーク公共図書館の地図の部屋で日がな一日、原稿を書き、自分に酔う、ってのもやった(気分だけ、キャリー*5、ww)。

台北でも、以前から気になっていた何種類かある大きな幹線道路を直進するバスにずっと乗ってみた。はじめて街の形がつかめた気になった。ホテルの裏でみつけた小さな食堂の白菜の醤油煮=滷白菜が、いたく気に入って毎日通った。3日目に、お母さんに、筆談で作り方を教えてもらい、帰国して何回も何回も作った。

ひとりでも、食べたかったらふたつ食べるのだ。台北にて 写真提供/山脇りこ

自分としっぽり向き合うひとり旅で得られたもの

健康なら、50代というのは、肉体と精神のバランスがとてもいい時期だと思う。知識も知恵も知性もそれなりにある。体力もまあ、ある。
しかし、まもなく、このバランスがままならなくなる予感も確実にあって、それが自分を思慮深くしてくれている。ポジティブなひとり旅ができる、最後の年代なんじゃないだろうか。(個人差はあると思います)。

旅に出て、まるっとひとりになってみると、おのずと残された時間の過ごし方を思った。会っていたい人、大切にしたい人はだれなのか?ごく自然に考えた。(このことはまた改めて書きたいと思う) たいへん言葉が悪いけれど、自分の中で、人間関係が整理されて、結果として、心の安寧を得られた。これは、思わぬ収穫だった。

もう一つの収穫は、ああ、やっぱりひとりでも!旅ができる自分でいたいな、と思うと同時に、だからこそ、相方との旅がこの上なく楽しいんだと、気づいたことだ。

ひとりでも大丈夫だけど、一緒にいたい、そんな人同士なればこそ、互いを愛おしみ、大切にしたくなるものだな、と。尊重やら尊敬ってやつも、依存しすぎないふたりになら、自然に生まれる(経済力だけの問題じゃないですよ)。

蛇足ながら、独断的女子目線で言うと、ひとり旅したい女を、いいじゃーん!て思うかどうか(ラッキー!と思うのとは違います。)は、パートナーを選ぶひとつの大事な視点になるんじゃないかなと。

私がひとり好きだからかもしれないけど、ひとり旅、すこぶるよい。次は夏?

次回は5月16日(木)公開予定です

山脇りこの養生スープ(4)

焼き新玉ねぎのスープ (2~3人分)

そろそろ終盤の新玉ねぎ。ちょっと贅沢に、じっくり焼いて作ります。
お休みの日にぜひ。私は軽く焼いたブリオッシュを合わせるのが気に入っています。

新玉ねぎ 2個
おいしい塩 小さじ1/2  (マルドンや、海塩がおすすめ)
昆布水  500cc(だし昆布30gほどを、1リットルの水に一晩つけておいたもの、なければ、水470ccと日本酒30ccでも。)
胡椒 適宜、好みで

1.    新玉ねぎは洗って、外皮をむき、底を少し落として、アルミホイルに完全に包む。
200度のオーブンで30分焼く。触れる温度になるまで、ホイルは開かずにそのまま冷ます。
2.    1のホイルをひらき、でてきている汁を余さず鍋に入れる。玉ねぎはナイフで縦に4つに切り、鍋にいれる。昆布水をそそぎ、中火にかけて、沸いたら、弱火で15分ほどコトコトして、味を見て塩で整える。

※せっかくなので、4個くらい焼いて、のこりの2個はサラダにいれたり、熱々にレモンをぎゅっと絞って食べたりするのもおすすめ。そのときはぜひ、きりっとした白と。

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*1 ご存知NHK総合の番組「チコちゃんに叱られる」。「ぼおおっと、生きてんじゃないよー!」と叱られます。ちなみに、チコちゃんの声は、きむにい♡

*2 2012年、NYのセントラルパークで、73歳の女性が性的暴行を受けた事件。
恨みによる犯行か、と伝えられた。

*3 テネシー・ウィリアムズによるニューオリンズを舞台にした戯曲だが、実際ニューオーリンズには「Desire(欲望)」という通りがあり、「欲望という名の電車」はDesire Streetを走る電車。まったく同じ路線は残っていないが、私が乗った時も電車には「Desire」と表示されていた。

*4 パリ&近郊の蚤の市、私はよくクリニャンクールへ行きます。週末のみ開く市。この他にも、パリ中心部の広場などで決まった曜日に開催されているものもある。ブロカント(Brocante)とは中古品のこと。いわゆるセカンドハンドで、個々が価値を見出して楽しむもの。アンティークではない。アメリカでいうjunk(ジャンク)のことで、ブルックリンなどのジャンクショップも楽しい。

*5 キャリーは、ご存知『SATC(SEX AND THE CITY)』のキャリー・ブラッドショー。彼女が最初の派手な結婚式をあげたのが、ニューヨーク公共図書館(New York Public Library)。ドキュメンタリー映画『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』も、2019年公開。話題に。