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欧州は冷ややかな「中国・ファーウェイ排除」安倍首相はどうすべきか

イタリアでも東欧でも説得は「空振り」

「ファーウェイ排除」に冷ややかな欧州

2019年は「5G元年」と言われる――。次世代通信規格「5G」(第5世代移動通信システム)のネットワークについて、メイ英政権はやはり、中国の通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)の参入を限定的ながら認めることを決めた。

2月に兆候はあった。「ファイブアイズ」(米国、英国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの英語圏5ヵ国で構成する諜報機関情報共有の同盟)メンバーである英国の諜報機関傘下の国家サイバーセキュリティーセンター(NCSC)のキアラン・マーティン所長が、トランプ米政権の「ファーウェイ排除」要請に対し「同社製品を使用したとしてもリスクを管理することは可能だ」とした上で「同社の不正行為を示す証拠はこれまでのところない」と述べていたのだ。

EU内では米の「ファーウェイ排除」には追従しないという表明が相次いでいる(Photo by GettyImages)EU内では米の「ファーウェイ排除」には追従しないという表明が相次いでいる(Photo by GettyImages)

「ファイブアイズ」の一員ではないが、IoT(モノがネットにつながる)の活用などで生産性を飛躍的に高める「第4次産業革命」を推進するドイツは先月、5G周波数帯の入札を開始したが、入札の基準において明示的にファーウェイ製品を排除することはしていない。

北大西洋条約機構(NATO)全体にとって極めて重要な米軍施設がドイツに多数あり、同国最大の通信会社・ドイツテレコムが米携帯大手Tモバイル社の筆頭株主であることなどからトランプ政権がメルケル政権の対応を気にしているのだ。アンゲラ・メルケル首相は5Gネットワーク整備の安全性について、「われわれ独自に基準を設ける」と米側要請をはねつけた。

 

中国に対抗「2兆円基金」創設も中身は不明

米国は欧州諸国に「ファーウェイ外し」を働きかけているが、各国の対応はバラバラである。そもそも、米国と欧州各国の違いのひとつは、既存の移動通信基地局におけるファーウェイのシェアである。

米国はスウェーデンのエリクソンが70~80%、フィンランドのノキアが10%強で1割未満だが、欧州、中東・アフリカ地域は約4割を占める。欧州内でもベルギー、チェコが80~90%、ドイツ、イタリア、ポーランドは60%、英国も50%~60%と高い。

もうひとつの違いは、英国ではファーウェイUKの研究所「HCSEC」が英国政府との合意の下でファーウェイ製品が同国の重要なインフラに及ぼし得るリスクを緩和することを目的とした機関として8年以上も前に設置されていることだ。マーティン所長発言はこのような背景もあって行われたものである。

こうした中で、米国はマイク・ペンス副大統領が2月16日にドイツで開催された「ミュンヘン安全保障会議」で、「中国の法令は、同国の通信企業に対して、中国政府によるデータへのアクセスを可能にしており、脅威をもたらす」と強く警告した。

他方、ドナルド・トランプ大統領は4月12日にホワイトハウスで演説、中国を念頭に置き200億ドル(約2兆2000億円)基金の創設など5G網の整備を進めると発表した。だが、その内容は判然としていない。要は、米中ハイテク覇権抗争の中での「ファーウェイ排除」一辺倒ということである。