耳の中のカタツムリは自然が生んだ「フーリエ変換装置」だ!

さまざまな音を聞き分ける巧妙なしくみ
三谷 政昭 プロフィール

波ってなんだ? ──横波と縦波

どんな音も空気の振動(波)だ。空気が振動するとはどういうことか、あるいは空気の波とはどのようなものか、もうすこしくわしく説明する。

「波」というと、図1のような絵を思い浮かべる人が多いのではないだろうか。この図は、上下方向の振動が左から右へ伝わる波を表している。つまり、進行方向(左から右)と媒質の振動方向(上下)が直交した波である。このような波を一般に「横波」という。

【図】横波
  図1 横波

たとえば、ギターなどの弦楽器を思い浮かべてみよう。ピンと張った弦をはじくと、弦全体が振動する。弦自体の運動方向と振動の伝わる方向は直交している。だから横波だ。

弦の振動が横波ならば、それが元になって発生した音波も横波になりそう……と思ってはいけない。空気の波は横波ではなく、縦波である。

縦波(あるいは疎密波)は図2のようなイメージである。これは、等間隔に並んでいた媒質が動いて、間隔が狭くなる部分と広くなる部分が交互に現れる、という振動を表している。「媒質の間隔」を「媒質の密度」と考えて、密度が大きい部分と小さい部分が交互に現れる、とみなしてもいい。そして、波の伝播方向と媒質の運動方向は一致する。

【図】縦波
  図2 縦波

空気の振動は縦波であり、密度の変化が伝播したものである。もういちど弦楽器を思い浮かべよう。弦がはじかれて急に振動をしはじめると、空気の視点からは、急に押されるところと引っ張られるところが生じる。その結果、弦のまわりの空気の密度に局所的な変化が生じ、縦波が発生するのだ(楽器の音においては弦以外の構造も重要だが、ここでは考えない)。

波の特徴を決める量

一般に、振動を特徴づける量として、「振幅」「周期」「振動数(周波数)」がある。図3に、最も単純な振動(単振動)の例を示す。媒質のある一点の変位(もとの位置からの移動距離)が時間的にどう変化するかを示したものである。

【図】単振動
  図3 単振動

時間(横軸)が0のときに振動しはじめたとする。最初は変位が大きくなっていくが、Aになった時点(時間=T/4)から、こんどは変位が小さくなっていく。

もとの位置(変位=0)にもどってきても(時間=T/2)止まらず、負の範囲で変位が拡大していく。

変位が−Aまで拡大すると(時間=3T/4)、こんどは(負の範囲で)縮小に転じ、やがて0になる(時間=T)。これが1回分の振動である。

同じ変動がくり返される様子が、図から見てとれる。

振幅というのは、変位の最大値(の絶対値)Aのことである。また、周期というのは1回分の振動にかかる時間の長さTのこと。そして、振動数は1秒あたりに繰り返される振動の回数のことで、f=1/Tで表される(単位はヘルツ[Hz])。

音もやはりこれらの量で特徴づけられる。振幅の大きさは音の大きさに相当する。また、振動数は音の高さに相当し、振動数が大きい(周波数が高い)ほど高い音として聞こえ、振動数が小さい(周波数が低い)ほど低い音として聞こえる。私たちの耳には、空気の振動の振幅や振動数を測定するしくみがそなわっていることが想像できるだろう。