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倒産寸前からV字回復した「沖縄の大学の奇跡」をご存じか

生き残りをかけた地方大学の取り組み

沖縄でトップレベル

少子化の中で、定員充足率を割り込む地方私大が増えている。やがてこの波は地方の国公立大にも及んでくるであろう。大学の選択と集中は不可避だ。

このような状況では、各大学の努力が重要になる。実際に一時、存続が危ぶまれたが、V字回復をした大学もある。

名桜大学(沖縄県名護市)は1994年に公設民営方式の私立大学として設立されたが、定員割れを起こした。しかし、2010年に公立大学になることでV字回復を遂げた。『地方大学再生 生き残る大学の条件』のなかで著者の小川洋氏はこう記す。

〈学生募集における効果は絶大で、公立化の翌年度には各学部とも倍率が4~5倍に達し、学生の質も大きく向上した。ただし志願者の増加分は、看護学科を除くと、ほとんどが県外出身者によるものであった。

その結果、入学者は国際学群とスポーツ健康学科で県内4、県外6程度と県外が多少多く、看護学科では3:1程度の割合で、県内者が多数を占め、全体としてほぼ5:5の比率となっている。

結果としては、県出身者、本土各地の出身者、海外留学生と異質で多彩な文化的背景を持った学生たちの交流が生まれ、キャンパスには活気が戻ってきた。

公立化によって実現した環境であるが、大学が活力のある教育・研究の核となるためには、そこに集う人々の多様性は不可欠である〉

 

過去数年の名桜大学の入学偏差値は沖縄県で最難関の琉球大学(国立大学)とほぼ同レベルになった。

評者は2017年から名桜大学の客員教授をつとめ、沖縄アイデンティティー論を教えているので、この大学の内情をよく知っているが、学生本位のきめ細かい教育が行われている。

〈1年次に、アカデミック・スキルとライフデザインの科目を必修とし、すべての学生が大学での学びの基礎を習得する指導が行き届くようにしている。

アカデミック・スキルには演習とライティング(レポート作成)およびコンピュータ・リテラシーなどが含まれる。大学によっては、これらの科目を非常勤講師に委ねる場合もあるのだが、名桜大では、外国語教育も含めて、リベラルアーツ機構という組織に十数人の専任教員を配置して教育にあたっている。

さらに、授業と連携して学生の学習を支援するためのセンターが開設されている。入学定員500人弱の中規模大学としては、他に見られない充実した施設である。

ライティングセンター、数理学習センター、言語学習センターが設置され、現在は15年に完成した学生会館「SAKURAUM」の4階に移設されてワンフロアを占めている。

主役は学生チューター(個人指導にあたる指導者)である。学内でのチューター養成は、アメリカの大学などの教育機関が組織するCollege Reading and Learning Associationによる養成法に準拠しており、国際水準のトレーニングを受け、成果を認められれば、チューター資格を認められる。教員や教育関連分野に就職しようとする際には、ひとつの能力証明として通用する〉