テレビを見ない「ジェネレーションZ」にタテ型動画ニュースは届くか

大手メディアが始めた挑戦
奥村 信幸 プロフィール

「イケてるお兄さん・お姉さん」がニュースを伝える

ステイチューンドでは、米東部時間の朝7時と午後4時の1日2回、2分から3分程度のビデオクリップが配信される。

ナビゲーターはNBC記者のガディ・シュウォーツ、MSNBC(NBC系列のケーブルニュース局)記者のサバンナ・セラーズ、さらに2018年2月からは音楽チャンネルMTVの人気番組「TRL」の司会者だったカルチャー色の強いジャーナリスト、ローレンス・ジャクソンも加わった。3人の人選の絶妙さ、また、番組内には彼ら以外登場しないという厳格なルールを守っていることも、注目されている理由だ。

 

シュウォーツはニューメキシコ州のテレビ局のニュースアンカーを経て、ロサンゼルスのNBC系列局から2016年にNBCに入った。2019年4月で36歳、日本とは違って60代や70代になっても現場で取材記者として働くケースも多い三大ネットワーク局では、かなり若手だ。他の2人はさらに若い。セラーズは24歳、ジャクソンは28歳だ。

彼らのファッションも特徴的だ。これまでのニュース番組の常識からはずれたカジュアルな格好で登場する。ジェネレーションZに身近に感じてもらうための仕掛けだ。後から加わったジャクソンは黒人で、人種的ダイバーシティ(多様性)にも気配りをしている。

「ステイチューンド」のナビゲーターの一人、ローレンス・ジャクソン

編集責任者のアンドリュー・スプリンガーも30代前半、ソーシャルメディア関連の記事で有名なマッシャブル(Mashable)のユーザー戦略部門や、ABCニュースのソーシャルメディア責任者を経て、2017年にNBCのソーシャルメディア戦略部門責任者に抜擢され、その後1年足らずでステイチューンドを立ち上げた。現在30人のチームが制作に携わっているという。

スプリンガーは番組の5つの大方針のひとつに、「普通の人が、普通に話すようにニュースを伝える」ことを挙げている。近所の格好いいお兄さんやお姉さんのようなナビゲーターたちが、「You guys have to check it out.(おまえら、これ見といたほうがいいぞ)」といった調子で話しかけてくるのだ。

2018年9月にテキサス州オースティンで開催されたONA(オンライン・ニュース・アソシエ−ション)の年次イベントのセッションで、スプリンガーが登壇した際(映像はこちらで見ることができる)、筆者は「報道記者は総じてあまり格好いい人が多くはないと思うし、若者にわかりやすくニュースを伝えるという高度な能力も必要な中、この3人のどこを評価して選んだのか」と質問した。「選考の過程で自然に彼らが残った」と、半ば煙に巻いたような答えであったが、格好良すぎず、適度に華がある番組の「顔」選びには、かなりこだわった跡が伺える。

スーツ姿は颯爽としていても、私服になると冴えない印象になってしまう人もいる。講演や会議での発言では説得力があるのに、プライベートだと途端に横柄に見えたり、堅苦しい話し方が抜けなかったりする人もいる。プライベートなモードで、しかもニュースとしての品位を一定のレベルで保ちながら、若者が「もっと知りたい」と思えるような発信をするには、従来のニュースづくりとは違った感性が必要だ。

知性と俗っぽさ、ファッショナブルさと安心感など、相反する要素を絶妙なバランスで維持しなければならない。