テレビを見ない「ジェネレーションZ」にタテ型動画ニュースは届くか

大手メディアが始めた挑戦
奥村 信幸 プロフィール

「デジタル・ストーリーテリング」とは何か

いまニュースの世界で進んでいるのは、新聞やテレビなど単一のプラットフォームを超えて、ニュースの内容や情報の分量によって、テキスト(文字)・音声・写真・映像・CGや立体図、地図などを組み合わせたグラフィックスやインタラクティブなコンテンツを使い分け、効果的に伝えるコンテンツをつくることである。

これは「デジタル・ストーリーテリング(Digital Storytelling)」と呼ばれ、新たなニュースの方法論となりつつある。縦型映像も、デジタル・ストーリーテリングをスマホで展開する上で効果があるとして、BBCやアメリカのメディアなどが活発に仕掛けを始めた分野だ。

 

最近起きたニュースの事例で考えてみよう。2019年4月15日に発生したパリのノートルダム寺院の火災を、デジタル・ストーリーテリングの手法で伝えるとどのようになるだろうか。

火災の第一報や、延焼が進んでいるうちは、視聴者はライブの動画を一番見たがるだろう。しかし、鎮火から一晩経てば、映像よりもスライドショーで色々な場面が素早く見られる方がいい。寺院の中から立ち上る炎、消化活動のようす、見物人たちの表情、ダメージを受けた会堂内、焼失を免れた調度品、関係者のリアクション、空中タンカーを使うべきだと言ったトランプ米大統領まで、関係する出来事や情報は広範囲にわたる。通勤の電車内で一通りチェックしたい人は、オンデマンド性があるコンテンツを望むだろう。

BBC Newsアプリのノートルダム大聖堂火災の記事

反対に、少し時間が経過した後でも映像でチェックしたいと思うコンテンツは存在する。尖塔が火に包まれ崩落するシーンや、集まった人々が「アヴェ・マリア」を歌う様子など、15秒くらいの映像ならもう一度見たいと思うかもしれない。目撃者や建物の内部を見てきた消防士のインタビューなどは、内容のインパクトと、出来事の発生からどのくらいの時間が経過したかという条件がニュースの価値と複雑にリンクしているものもありそうだ。

ニュースの5W1Hをまとめたテキストと、ビジュアル・コンテンツをどのように配置するかという、デザインやレイアウトも重要だ。

時系列でまとめられたコンテンツを、記事とは別に立てるか、アップデートした出来事を上に乗せていく形にするか。あるいは地図や現場の見取り図などをクリックすると、その地点から撮影した映像や、そこに配置されている絵画の資料写真などが出てきて、それがいかにダメージを受けたか、あるいは無事だったかというリストアップが行われる――などなど、ユーザーに新しい発見をもたらし、同時に負荷なく操作できるインターフェースも求められている。

アメリカでは、およそ10人に6人が、かなりの頻度でスマホを使ってニュースを得ている。画面の狭いスマホで何ができるのか、試行錯誤が続けられている。

「ジェネレーションZ」をねらえ

ニュースに関心が薄い若いユーザーを引き寄せる試みも始まっている。ターゲットは「ジェネレーションZ」と呼ばれる、1997年以降に生まれた、22歳以下の若者たちだ。

今やティーンの95%がスマホを利用している中 、彼らが日常よく利用しているソーシャルメディア上で、「あれ、これなんだろう?」と自然に入っていけるコンテンツが求められている。ここでも縦型ビデオが注目されている。

NBCテレビは2017年7月、Snapchatで「ステイチューンド(Stay Tuned、『チャンネルはそのまま』の意)」という番組を始めた。ピュー・リサーチセンターの調査によると、アメリカのティーンのおよそ10人に7人がSnapchatを利用している

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Snapchatはソーシャルメディアだが、自撮りに画面の書き込み機能でデコレーションを施して友だちに送るなど、個人的なやりとりに使われることが圧倒的に多い。そこにNBCはニュースを仕掛け、新しいコンテンツの楽しみ方を提案したのだ。