米NBC「ステイチューンド」のナビゲーターたちと縦型ニュースの画面

テレビを見ない「ジェネレーションZ」にタテ型動画ニュースは届くか

大手メディアが始めた挑戦

BBCでは、すでに人気コンテンツ

英語が得意でない人も、スマートフォンでBBCニュースのアプリを開いてみてほしい。上の方に「Videos of the Day(きょうの映像)」というコーナーがある。編集責任者が世界のニュースから選りすぐったニュース映像7本だ。

この原稿を書き始めた米東部時間4月15日には、「2人の大統領」で政治的な不安の高まるベネズエラの志願民兵、オーストラリア西部で貧困のため交通違反の罰金を払えず、収監の危機に直面するアボリジニ(先住民)を救済する人たち、両翼の長さ117メートルの世界最大の飛行機「ストラトローンチ」の試験飛行、ケガをして発見された大きなネコが水中歩行のリハビリで回復したストーリーなどが並ぶ。

1〜2分程度のマイクロコンテンツだが、最大の特徴は、これらがスマホ用に編集された「縦型の映像(Vertical Video)」であることだ。このコーナーは2016年にスタートし、1年間のうちにBBCアプリでニュースを見る人を30%も増加させた

BBC Newsアプリの「Videos of the day」の画面

筆者は一昨年12月にBBCの担当者に話を聞いたが、BBCでは主に通常のテレビ用カメラ(縦と横の比率は9:16)で撮影したものを、スマホの画面で見やすいよう縦にトリミング(切り取り)しているとのことであった。

「いろいろ映像を試しているが、画面が小さいスマホでは、政治家などの発言は、表情がよく見えるバストショット(胸から上の映像)にフォーカスした方がよく見えてわかりやすい」「顔の表情という大事な情報をつぶさずに、ちょうど下の部分に効果的に字幕を入れることもできる」とのことだ。

 

人」に焦点を当てる

横長の映像に慣れ親しんできた人にはまだ違和感もあるだろうが、スマホを持ったまま画面を見るなら、いうまでもなく縦型映像の方が自然だ。映像を見るために横に持ち替えたり、テーブルに置いたりの「ひと作業を省く」ことは、通勤中や仕事の合間などわずかな時間に、短い時間で視聴するスタイルが一般的になっている状況では効率がよい。

YouTubeなどはスマホが縦のままでも見られるが、横長の映像がかなり小さくディスプレイされてしまう。やはり画面を横に倒して画面いっぱいに映像を拡げて見たくなるのが、自然な映像消費の感覚であろう。

スマホユーザーがメインのソーシャルメディアの世界では、縦型の画像や映像がすでに自然に使われている。Instagramや Facebookのストーリーズ、Snapchatなどでは、自撮りで自分のバストショット(胸から上の映像)を写すことが多い。ユーザーはそのようなスマホの機能を自然に使いこなしている。

デジタル化以前のテレビの縦横比は3:4、デジタル化で9:16と横長になった。人物を1人だけ撮ると、両側に空間ができる。

このとき、映像を見ている人は真ん中の人物だけでなく、スクリーンに映る他の情報も認識している。背景はスタジオか家のリビングか、仕事場か、片付いているか散らかっているか、光の具合は昼か夜かなど、無数の情報が目に飛び込むが、私たちは無意識のうちに不要な情報を切り捨て、メインの情報に注目している。

つまり、「横長のフレームに人物が1人だけ」の映像は、余計な情報が多く集中できない映像でもあるのだ。視聴者を人間に注目させるなら、縦型動画は理にかなっている。

前述のBBCニュースの映像でいえば、「世界最大の飛行機」は、機体が非常に横に長いため縦型では不利な部分も多い。しかしテレビ業界で仕事をしてきた筆者が見ても、縦の映像でも「それなりに見られる」と思えた。

横長の機体を全て映そうとすると小さなサイズの映像にならざるを得ないが、BBCはボディが2つある特徴的な構造などを編集でうまく伝えており、視聴している人の関心は、むしろ機体前部のコックピットの形状や、ボディの塗装や質感、垂直尾翼の形状などディティールに移っていく。縦型であることの制約は、さほど弱点になっていないように思える。