――最後に、漠然とした質問で恐縮ですが、市川さんにとって“演じるということ”にはどんな意味があると思いますか?“自己表現”なのか、“社会とつながること”なのか、“何かしら社会に貢献したい”ものなのか。

市川:いつだったか、しばらく休んでいるというか……次の作品まで、時間が空いたことがあって。そのとき、家で、「電車に乗るのでも、ご飯を食べに行くのでも何でもいいから、少しは社会に貢献したい!」と思ったことがあります(笑)。「私、今何してるんだろう?」「私、何にもなってないな」とか思って(笑)。

でも、そのときは楽しくない時期でしたね、心が止まっていたのかもしれません。そのあと誰かにも言われたけど、人間、暇なときって、ろくなこと考えないんですね(笑)。働くって行為は、何でしょうね。 

日本人の感覚として、耐え忍ぶことや謙虚さとかを、“美徳とする”みたいな感覚がどこかにないですか? 私は、これから先も自信満々にはなれないし、なる予定もないですが(笑)、ただ自分のことは、もう少しちゃんと認めてあげられるようになりたいです。それも練習中です(笑)。

人に何かしてあげたいと思うとき、人間はアンパンマンにはなれないんですよね。アンパンマンのように、自分の身体をちぎって、人のお腹を満たすことはできない。人間は、自分が傷ついてまで人を救ったとしても、それでは本当の意味で救ったことにならないと思うんです。

だから、自分を犠牲にする形ではなく、ちゃんと自分で自分を認めた上で、社会と繋がって、小さくても社会に何かしら貢献はしていたい。そのためには、なるべく、健やかでたくましい心と身体を持てるようになりたいと思います。

PROFILE

市川実日子 Mikako Ichikawa
1978年生まれ。東京都出身。雑誌「Olive」の専属モデルを務めるなど、10代よりモデルとして活躍。2000年、映画『タイムレスメロディ』で長編映画デビュー。03年映画『blue』でモスクワ国際映画祭最優秀女優賞を受賞。16年映画『シン・ゴジラ』では毎日映画コンクール女優助演賞、日本アカデミー賞優秀助演女優賞を獲得。NHK『ドキュメント72時間』、テレビ東京『新 美の巨人たち』のナレーションも担当している。今年公開予定の映画に、『よこがお』がある。

INFORMATION

映画『初恋〜お父さん、チビがいなくなりました』

3人の子供が巣立ち、人生の晩年を夫婦二人と猫一匹で暮らしている勝(藤竜也)と有喜子(倍賞千恵子)。勝は無口で頑固、家では何もしないという絵に描いたような昭和の男である勝の世話を焼く有喜子の話し相手は、飼っている黒猫チビだけだった。そんなある日、有喜子は次女の菜穂子(市川実日子)に「お父さんと別れようと思っている」と告げる。真意を探ろうと、3人の子供たちは大騒ぎ。そんな中、猫のチビが突然姿を消してしまう――。

監督:小林聖太郎
原作:西炯子『お父さん、チビがいなくなりました』(小学館フラワーコミックスα刊)
脚本:本調有香
音楽:小六禮次郎
出演:倍賞千恵子 藤竜也 市川実日子 星由里子 他
制作:ビデオプランニング
配給:クロックワークス
5月10日 全国ロードショー
©2019西炯子・小学館/「お父さん、チビがいなくなりました」製作委員会

Photo:Aya Kishimoto Hair&Make-up:Kyoko Fukuzawa Styling:Aya Tanizaki Interview&Text:Yoko Kikuchi

シャツ ¥118800(税抜き)、パンツ¥ 103000(税抜き)、ブーツ¥162500(税抜き)/全てアン ドゥムルメルステール コレクション ブランシュ(リフト エタージュ☎03-3780-0163)